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「好き」の種類 (※ぬるい腐向け。幼い子の片思いで歳の差)

「好きな人はいますか?」

「氷雨!」

満面の笑顔で答える藍晶に、ほんの少しだけ困ったように微笑みながら、氷雨は言葉を紡ぐ。
「……ありがとう。だけど藍晶――たぶんこれ、意味が違うと思――」
「違ってないもん。おれが好きなのは、氷雨だよ」

氷雨の言葉を皆まで聞かず、藍晶は強く首を振る。

「ええと、どう言ったらいいかな――って、伽羅さん、笑ってないで助けて下さい……」

 

本気で困っているらしい、氷雨の困惑の表情を見てとり、伽羅もわずかに眉をひそめる。

「この年齢の、しかもこのクソガキに説明するのは難しいわね」

何しろ子供の言うことなので、「好き」に種類があることを解って言っているのかどうかも定かではない。
しかし、薮蛇ということもある――果たして、教えても良いものか。

これまでの二人のやりとりを見ていて、幼い藍晶が氷雨に対して淡い恋慕の情を抱いていることに、伽羅は気付いていた。

 

けれど――氷雨が藍晶に向ける感情はおそらく、兄弟間での親愛の情以上のものでは無い。伽羅は、確認の意味を込めて我が子を諭す。

「――藍晶、アンタ近所の女の子と遊んでて『大きくなったらお嫁さんになる』とかって話したことあるでしょ? そういう意味なのよ。コレは」
「だから、おれが大きくなったら氷雨をお嫁さんにするの!」

(やっぱそうきたか。――氷雨くんは、多分本気にしないでしょうね……さて、どうするかな)

 

「……ええと、藍晶。気持ちは嬉しいんだけど、俺は男だから、藍晶のお嫁さんにはなれないんだよ?」
「ええー?! お嫁さんって『一生傍にいてください、大事にします』って思う相手のことなんだろ? なんでダメなんだよ!」

困ったように微笑みながら、あくまで相手を傷つけないようにと諭す氷雨の態度を見て、ここは我が子を傷つけず、二人の間に妙な遺恨が残らないようにするには、冗談めかして誤魔化すのが最良の策、と伽羅は判断した。
「なんでそこであたしの名前を出さないかな、このクソガキは。まあ母親も嫁には出来ないけどね。藍晶、女の子限定で答えなさい」
「うー……氷雨がいいのに。わかったよ、しょうがないなあ。氷雨がダメなら『静御前』。この前会った、冬の空みたいな淡い髪色の綺麗な人。長い髪の似合う優しそうな人だよ。あ、そういや目の色がちょっと氷雨に似てたかな?」

「!! ら、藍晶、どこでその名を……」

(どっちも氷雨くんよ! ……って、教えるわけにもいかないし。参ったわね。この子、多分かなり本気だわ)

「迷子になったときに、手を引いて帰ってくれたんだ。あの人、名前を聞いても教えてくれなかったけど、あとで近所のおっちゃんに聞いたら『あの方は静御前様だ』って教えてくれた。氷雨がダメならあの人でガマンするよ」

動揺する氷雨をよそに、藍晶は嬉々として静御前との経緯を語る。
「静御前」の二つ名を持つ当主は実はもうひとりいるのだが、藍晶のいう特徴を備えた人物は一人しか居ない――すなわち、7代当主・雫海の代理で娘薙刀士の装束を身につけて先日の式典に出た、氷雨である。

 

あの人で『ガマン』って何だよ、とポツリと呟きながら頭を抱える氷雨の袖を引っ張り、藍晶に聞かれないよう注意しながら小声で伽羅は話しかけた。

「氷雨くん、ちょっといい? ――あの姿、見られてたのね。まぁいいわ、どうせ子供の言う事だし、藍晶は飽きっぽいからすぐ忘れるわよ。この後の訓練でやる気無くされても困るから、ココはあの子に合わせてやって」

 

わかりました、とため息をつく氷雨の姿を目にした藍晶は、泣きそうな顔でこちらを見ている。

「……氷雨、おれのこと嫌いなの?」
「ごめんね、ちょっとびっくりしただけだよ」

 

優しく頭を撫でる、大好きな手の感触に安心したのか、藍晶は何とか泣くのを堪えた。

「――大丈夫、俺は藍晶のことが大好きだから、嫌いになんてならないよ。俺でいいなら、ずっと傍にいるよ」
「やったー! じゃあ当主様――氷雨の母さんにも認めてもらえるように、おれ頑張るから!!」

ぎゅーっと、嬉しそうに氷雨に抱きつく藍晶を見ながら、伽羅は心の中でそっとため息をつく。
(氷雨くんって、どうしてこう迂闊なのかしらね。この流れは思いっきり、求婚と了承ととられても文句は言えないのに……きっと苦労するわね、藍晶は)
どのみち袖にする気なら、妙な期待を持たせるようなことを言わなければいいものを。
たしかに、「あの子に合わせてくれ」と頼んだのは自分だが、それにしてももう少し言い様はあるのではないだろうか――という気がしないでもないが、氷雨とてまだ5ヶ月の少年である。まして、色恋沙汰にうとい彼の性格から、そういう機微を期待するのは酷というものかもしれない。

「ま、後々困ったことがあったら相談しなさい。あたしが責任持つわ」

我が子の幸せを願わない親などいない。

どういうわけか、この歳の離れた兄のような存在に恋心を抱いてしまった我が子の将来を思い、当分『静御前』の正体は全力で秘匿しよう――と、伽羅は密かに誓いを立てたのだった。

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