序章
音が聞こえる。男の声と、女の声。
―――アタシハドウナッテモイイ ダカラオネガイ コドモダケハ コドモダケハ・・・!
男の笑い声を聞いて、なんだか、とてもいやな感じがした。
女の声・・・いつもなら、ずっと聞いていたいと思うのに、今はなぜかその声を聞くのがいやだった。
男の笑い声とはちがう、なにかいやな感じ。
―――カワイイコ ・・・ゲンキデネ
また、女の声が聞こえた。さっきの声にあった、いやな感じは消えていた。
でもなぜか、とてもいやな感じがした。
『コンナミヤコナドホロンデシマエバイイ』
また、ちがう声が聞こえたけれど、何のことなのかわからなかった。
何を言われているのか、わからない。言葉というより、そこにあるただの雑音の数々。
音が聞こえてくるたびにこころがざわめくのも、ただ「いやなかんじ」とだけしかわからなかった。
2004.1 初出 2011.11 再録