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イラスト作成手順・アナログ編 手順4 彩色4・二人目の髪・小物・瞳を塗る

このまま、青系統を進めていった方が効率は良さそうなのですが、青と反対の系統の「赤」を入れなくてはいけないので、後々を考えてここで炎の髪を塗ることにしました。
(昔読んだ、カラーイラストの描き方の本には『赤は滲むと凄く汚いから最後に塗れ』とありましたが、最近私ソレ守ってません。苦笑)

す、すみません……若干、時間との戦い(ボカシをキレイにしようと思ったら、下塗りした水が乾ききる手前に色のせないとうまくグラデーションにならない。炎の髪は面積が狭いので乾くのも早い)があるので、炎の髪、既に2段階目です;;

炎の顔アップで見ると今こんな感じです。

髪と瞳が共に火の守護カラーなので、瞳も一緒に塗ってしまいます。


炎の瞳ベース塗ったところ。

顔アップでこんな感じ。

髪に若干、毛並みというか影が足されてます(笑)。

 

 

炎の瞳・2段階目。この状態だとけっこう怖い……。
ヒキで全体見るとこんなカンジ。

炎の瞳に影を入れて、瞳孔とベースをなじませます。

次は嵐の瞳。


ついでに髪飾りの金色部分も塗ってしまいます。
ヒキで全体見ると今こんな感じ。

嵐の瞳2段階目。エクステや髪留めにも少し影色が入ってます。


ヒキで全体見るとこんなカンジ。

 

さて。個性の強い、赤が入った所で、衣装の残りの部分を仕上げていきます。

→戦装束・藍部分の塗りへ

イラスト作成手順・アナログ編 手順4 彩色3・衣装を塗る

次は、面積の広い、嵐のコートを塗ります。


だいたい影はこの辺? と、適当に濃淡つけます。
炎の顔痣、この間に塗ってたみたいですが前後の写真撮り忘れてました;;

ついでに、炎の薙刀装束の、白色部分の影を、嵐のコートや髪のハイライトのアタリに使ったベースカラーで一緒に塗ってしまいます。

嵐のコートに影を入れます。

→手順4 彩色4・二人目の髪・小物・瞳を塗る へ

イラスト作成手順・アナログ編 手順4 彩色2・髪を塗る

肌の次は髪です。


一段階目、こんなに薄くて大丈夫かという位淡く、色を乗せます。
私は「ハイライトを塗り残す」タイプなので、どこにハイライトが来るのかのアタリをとってる感じでしょうか。
髪塗りの部分だけアップにするとこんなカンジ。

 

髪・2段階目。

髪の基本となるお色をざっくり入れます。
顔だけアップで見るとこんなカンジ。

 

髪・3段階目。


髪の影の部分を重ねていきます。
このとき、睫や眉も一緒に塗ってしまいます。
アップで見るとこんなカンジ。

 

髪がだいたい仕上がったので衣装に移ります。

 

→手順4 彩色3・衣装を塗る

イラスト作成手順・アナログ編 手順4 彩色1・肌を塗る

お待たせしました。
いよいよ、色塗りに入っていきます。

絵に決まりなんて無いので、好きなように進めれば良いと思いますが……私は肌で失敗しちゃうと取り返しがつかないことが多いので、肌から塗ります。
今回使用したお色はコレ。(つってて、肌のときしかチューブとインク色写真とって無い)

・リキテックス ライトポートレイトピンク
・サクラアクリル イエローオーカー
・サクラアクリル バーントシェンナ
・ホルベインカラーインク ヴァーミリオン
・ホルベインカラーインク レモンイエロー
・グラデーションメディウム(薄め液)

リキテックスは、よくよく見るとチューブの裏に「他のメーカーのアクリル絵具と混ぜないで下さい」とか書いてありますが、私は気にしません!
アクリルは基本的に、厚塗り用画材だといわれていますが、水やメディウムで薄めると耐水性を保ったまま、透明水彩に近い塗りが可能です。

というか私、上からガンガン重ねるので、耐水性の画材じゃないとムリ。
乾くと滲まなくなるので、水使いまくりの私にとって耐水性の絵具は必須。

↓というわけで、1人目(嵐)の肌を塗り終わったところ。

炎(二人目)の肌もここで塗ってしまいます。

アップで見るとこんなかんじ。

…思ったより画像だらけになりそうなので、彩色手順は何ページかに分けます。

→彩色手順2・髪を塗る

20質問アイコン元絵

秋幸(槍)、片瀬カラーの戦装束に着替えた(笑)嵐(中央・弓)と秋征(弓)

男21、描くの難しい!! 原画のあの、ほわーとした素敵な雰囲気に全然似ないよ!(涙)
養子縁組後の嵐なので、密かに髪飾りに縁結び鈴を追加してます。

嵐の髪飾りのうち、羽飾りは小さいの2つと大きめの羽がひとつで、実は左右非対称。
紐付きのエクステは、戦装束の色に合わせてなじむ色に変えるのが嵐のこだわり(笑)

小さいのは純粋にお洒落(笑)でつけてるんだけど、大きい羽飾りは実は意味というか隠し設定があります。
(そ、そのうち描きます…実家で、嵐たちが大江山を『越えない選択をした』ことに若干関係してます)

同じ風髪・土瞳でも性格とか特徴の違いで、本当に少しだけ、差をつけてるんですが。
……っていうより、一卵性双子のはずなのに秋幸と秋征が全然似てない(苦笑)

 

使用画材:アルシュ水彩紙・クリアジェッソ・ホルベインカラーインク・アクリル絵具

高羽家青嵐記・参

「はぁ? 意味わからんわ。俺に交神行くなて。そら、相手は忍ちゃんのお母さんとは別の神さんやけど、力考えたらしゃあないやろ」
「そういうことを言ってるんと違う。透ちゃんが『交神』行くのが嫌なんや!」

忍が家に来てから、ふた月経った。
最初の頃こそ、怖がっているような素振りを見せていたが、いい加減俺の口の悪さにも目つきの悪さにも慣れたのか、今では気に入らないことがあると、忍は平気で言い返してくるようになった。
口調も、すっかり俺のがうつってしまった。
街の中で、商人相手に値切るときは良いが、良家の子女としては如何なものかと思い、『直せ』『俺の口調を真似るな』と言い聞かせているが一向に直る気配が無い。

「じゃあ何か? 舞子さんにずっと操立てえ言うんか?」
「お母ちゃんに操立てろやなんて言うてるんとちゃうわ!」

忍が何に対して怒っているのか全く見当がつかない俺は、切り口を変えることにした。

「あのなあ。――ずっとふたりで討伐行ける訳なんかあらへんやろ。わかってんのか、忍ちゃん。自分、先月大怪我したばっかりやろがや」
「嫌なもんは嫌や!」

どうして、判ってくれない? 忍をこれ以上、危険な目に遭わせたくないから、戦力の増強が必要で……忍が元服を迎えていない以上、交神の儀に臨む事が出来るのは、俺しか居ない。
だから、潔斎して……儀式に必要な祈りの祝詞を覚えさせようとしたら、このザマだ。

忍が、先月留守番を任せた折に、近所に住む三味線のお師匠さんの元で琵琶の弾き語りの才能を開花させたことは、イツ花から聞いて知っている。
そして、三味線の師匠に対し、仄かな恋心を抱いているのではないか……ということは、手習いの行き帰りの、忍の嬉しそうな様子を見て察しがついた。
だから俺が、交神に行くと言っているのに。
忍に行けと言っているのなら拒まれるのはまだ解るが、何故俺が交神に行くのを拒む。

「せやったら、忍ちゃんが交神行くか? 俺は別にどっちでも――」
「知らんわ! 透ちゃんのアホ!!」

俺が最後まで言い終わらないうちに、ぱぁん! と頬が鳴る。じわり、と顔の左側が熱くなった。

「痛ったー……って、忍ちゃん、どこ行くねん!」
「透ちゃんのアホ!! ついて来んといて! 透ちゃんなんか、大っキライや!!」

(--っ、何で泣くねん! ホンマ、ワケわからんわ!)

走り去る忍を追いかけることも侭ならず、俺はただ、震える自分の拳を握り締めることしか出来なかった。

「これやから、女は好かんのや」

どん、と思わず壁を殴る俺に、イツ花が控えめに話しかけた。

「あの、透様」
「何や」

上目遣いに切り出すイツ花に、例によって俺はつっけんどんに答えてしまう。
元々細かいことを気にしない性分のイツ花だ。いい加減慣れたのか、俺に睨まれた位では全く動じないのでこういう時は助かる。

「さしあたっての問題は、『戦力の増強』なんですよネ? でしたら、交神でお子を授かる以外に、『養子をお迎えする』ですとか、『結魂の儀』により他家との間にお子をもうける……といった方法もございますが」
「……は? 何やて?」

養子縁組、は何となくわかる。
一般的に、市井で行われているのと同様に、他家から跡取りを迎え入れるということなのだろう。

(他家との間にお子て、『種絶の呪い』はどこ行ってん!!)

俺は余程、驚いた顔をしていたのだろう。軽く笑うと、イツ花はこう言った。

「透様、イツ花の『説明』ちゃんと読んでませんね? 確かに透様にかけられた『種絶の呪い』は、人との間に子を成すことができません。――でも」

そこでいったん言葉を切ると、いつもの「お風呂の用意、出来てまーす!」と告げる時と同じ位に軽いノリで、イツ花は衝撃の事実を口にする。

「この世界には――いえ、正確に言うと『異世界』に近いんでスが。遠き異国に、当家と似たような境遇のご一族がいらっしゃるんですよ」
「つまり、そいつらとの間にやったら子を成せる――跡取りをもうけられる、って事か」

ずり落ちかけた眼鏡を直しながら、俺はイツ花の言葉の続きを語る。

「さっすが透様! お話が早くて、イツ花、とっても助かっちゃいます!」
「……結論から言うで。まず、『養子縁組』は無しや。俺の……いや、俺らの目的の為に他所様のお子さんを巻き込むことは出来ひん」

俺の返答を聞くと、イツ花は「はぁー」とガックリ肩を落とした。
しかしすぐに顔を上げると「ではご結魂なさるのですネ!!」と満面の笑顔で返してきやがった。
立ち直りの早い奴だ。

「ちょい待てや。『結魂』て、歳は関係無いんか?」
「いえ、結魂の儀に臨むには、肉体・魂の双方が安定した状態で無ければダメなんです。つまり、元服を終えられた方が条件ですネ」

イツ花の説明に、少しばかり引っかかるものを感じた俺は、即答を避けて念の為に確認をとる。

「なあイツ花ちゃん。ソレ交神とどう違うねん。俺にはイマイチ、違いが解れへんねやけど。俺にも解るように教えてや」
「うーんとですネ。簡単に言うと、肉体の繋がりを以ってお子を授かるのが『交神の儀』、当家と似たようなお立場の方から、魂の力をお借りしてお子を授かるのが『結魂の儀』。……おわかりになります?」

なんとなくの印象ではあるのだが、神様とイチャイチャ触れ合うのが交神、異国の異性と仲良く語らって「頼んます!」と拝み倒すのが結魂、ということで良いのだろうか。

「いや、サッパリわからん」
「あうぅ……では、忍様には、今と同じお話をイツ花からしておきますネ」

俺が理解していないものを、説明できる筈が無い。
ここはイツ花の提案に甘えることにした。

翌日。お気に入りの琵琶を片手にお師匠さんの所から帰ってきた忍は、俺の顔を見るなりこう言った。

「うちが、跡取りを授かる。結魂でも交神でも、何でもする。せやから、透ちゃんが交神に行くんは無しやで」

真っ直ぐに俺の顔を見据えて告げる、強い意志を宿した瞳。
……俺に、断れるわけがない。

「わかった。けど、忍ちゃんが儀式に行くなら……あと三月、ふたりで頑張らなアカンっちゅーことやな」
「うちに出来る、いっちばんの譲歩やで。こん位のワガママ、花嫁修業やと思って許してや」

忍はそれだけ言うと、顔全体をくしゃくしゃにして俺を見上げる。
(あ、やばい。――この顔は、また、泣く)

「しゃーないなァ。ワガママ、きいたるわ」

何故、忍はこんな顔をする。
時折見せる、辛そうな――今にも泣き出しそうな笑顔。
俺は思わず、忍の頭に手をやり……小さい子にするように、ぽんぽん、とはたいてから軽く撫でた。

「もう! 子供扱い、せんといて!」
「すまんの。ほな、忍ちゃんが花嫁修業しとる間に、似合いのエエ男探してきたるから、待っといてや」
「……透ちゃんのアホ」

ぷい、とそっぽを向く忍を見て、何故だかわからないが、俺もほんの少し……苦しいような、痛いような気持ちになった。

「はは、子供扱いするな言うから、大人の女な忍ちゃんにピッタリの相手探す言うとんのに。手厳しいのー」
「うっさいわ! そんなん、自分の相手ぐらい自分で決められるわ。ほなウチ、早よ怪我治せるようにおとなしくしとるから、透ちゃんはさっさと討伐行きや」

「おう。なら、留守番しとる間に、神さんの姿絵やら見合いの釣書やら見て、エエなって思う相手、見繕っとくんやで」

イツ花の持ってきた、神様の姿絵やら釣書の山を指して言うと、忍は一瞬そちらに目を遣り、キッと俺を睨みつけた。

「……うちの、花嫁姿にケチつけたら許さへんからな」
「あほか。そんなこと、絶対せえへんわ――忍ちゃんやったら……いや。何でもない」

――鎧や薙刀なんかより、花嫁衣裳の方が似合うエエ女に絶対なる。

本当は、忍には戦装束などよりもっと、娘らしい着物の方が似合う――一瞬、そんな言葉が頭の片隅に浮かんだが、口に出すことは出来なかった。

「何なん? 透ちゃんのアホ。……無茶せぇへんと、今月が終わったら、帰って来ィや」

俺が交神に行けない(忍がイヤだと拒むので、儀式に必要な『一族全員の心をひとつにした祈り』を得ることが出来ない)以上、選べる選択肢は三つ。

俺が他家の娘と結魂の儀を行う――だがこれは、イツ花が持ってきた釣書を見ても、言い方は悪いがどの女も同じに見えて、選べなかったのでそのまま山積みになっている。

忍が交神か結魂に行く――しばらく先になるが……昨日一晩、悩みに悩んで、さすがに「これは無いな」と思う相手は抜いておいた。
あの中からなら、どの相手を選んでも、忍が辛い思いをすることは無いだろう。

そして、先ほどの返事で解ったことがひとつだけ。
おそらく忍は、俺に対して交神だけでなく――結魂にも行くなと、そう言いたいのだ。
能力を考えれば、俺が子を成すより忍が子を成した方が、強い子を授かるに決まっている。

しかし、こうハッキリと、俺を信じていないと――拒絶の意思を表されるのは正直堪える。
初対面で泣かれてから、好かれているとは思っていなかったが……やはり、認めてはくれないか。

忍に泣かれると、どうしたら良いのかわからなくなる。
独りきりで討伐に出かけて、傷を負う痛みの方がまだマシだ。
そして何故なのか、これも全く理由がわからないが、忍に『他家の娘と結魂の儀を行え』と言われなかったことに対して、俺は何処かでほっとしている。
信じてもらえないもどかしさと矛盾する――この気持ちは、一体何なのだろう。

ただ、今の俺に出来ることは、忍が怪我を治すために休養している間、討伐に出かけてひたすら鬼を狩ることだけだ。
結魂ならば奉納点は必要無いが、交神を選んだ場合に、奉納点が足りないが為に望む相手を諦めなければならない――という事態は出来る限り避けたい。
無事に帰ると約束してしまった為、大して戦果を上げることは出来なかったが、今月は一月で討伐を切り上げて京に帰ることにした。

 

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高羽家青嵐記・弐

地上に降りて、俺は近所に住む剣術師範に戦い方を教えてもらうことになった。

どういう素性かは知らないが、師範は街の人とほんの少し雰囲気の違う人で――夕暮れの海のような蒼い瞳を持っていた。
異人の商人に時折見る、金の巻き毛に青い瞳ではなく、黒髪に青い瞳の組み合わせは珍しい。一度、気になって聞いたことがあるが、返答は「異国の出身だから」とだけ言われた。(ああ、聞かれたくないねんな)と思った俺は、師にそれ以上尋ねることはしていない。
師は、俺が小さい頃から通っていた寺子屋にも度々出入りしていて、例の喧嘩の時にも俺を庇ってくれた。

俺は、親父や天界の連中だけでなく――おそらく、とても沢山の人に助けられて「生かされて」いる。
本来思い描いていた方法とは大幅に違ってしまったが、荒れた都を建てなおす力になれるのなら、『鬼狩り稼業も悪くないかもしれない』と思えるようになった。

 

そうしてしばらくたった頃。
天界から遣わされた、下働きの娘――イツ花に連れられて、俺の胸の辺りぐらいまでの背丈に成長した、忍が家にやってきた。

「はじめまして、透様! 今日から、身の回りのお世話をさせて頂くイツ花です! よろしくお願いしまーす! とりあえず、風邪を引かないだけが取り柄の私ですから、何でもバーンとォ! お言いつけください。でもってェ、一日でも早く朱点童子を倒せるよう一緒に頑張りましょうネ!!」

(な――昼子?! 何で、此処に?!)
口も利けないぐらい驚いている俺を尻目に、イツ花は一気に挨拶の口上をまくし立てる。

「何が『はじめまして』や! ふざけとんのかお前」

口上が終わり、ようやく口を挟めるようになったが、反射的に口をついた言葉はつい喧嘩腰になってしまう。
忘れもしない琥珀の瞳を真正面から見据え、俺は忍の存在を忘れてイツ花を睨みつけていた。

「ごめ、なさ……」
「違う、自分に言うてるわけや無い」

イツ花の袖を握り緊めながら、見上げる藍色の瞳に気がついて、俺は慌てて声をかけるが遅かった。
忍の両目には、涙が浮かんでいる。

「怒らないで、父様」
「お父ちゃん言うな」
「ごめんなさい」

反射的に言った俺の顔を見て、忍はぼろぼろと大粒の涙をこぼす。
耐え切れなくなってしゃくりあげる少女は、床に視線を落としたままだ。

(ああ、この子も。――俺のこの瞳が怖いんか)

 

寺子屋に通っていた頃から、極稀に女子と目が合うと決まって目を逸らされていた。
眼鏡をかけるようになってから、多少マシになっていたが――自分しか居ない家の中だったので、油断していて今日は眼鏡をかけていなかった。

少しかがんで視線の高さを揃え、懐から眼鏡を取り出してかけてから、俺は忍に声をかけた。外回り用に何度か練習した、笑顔を作れていると良いが。

「すまんかったの。これで、もう怖いことないやろ? 泣いたら別嬪さんが台無しやで」
「……」

驚いたように、無言で見返す忍は、ようやくイツ花の袖を離した。

「忍様も落ち着かれたことですし。いざ、出陣!! の前にィ、パパパパぐらいで構いませんから、色んな情報をお確かめくださいネ」

言うだけ言って、イツ花は「じゃあ、荷解きしてきまーす!」とさっさと蔵に引っ込んでしまった。

(あの顔立ちは、どうみても昼子にそっくりやねんけど。……昼子から感じるあの威圧感が無いし、年齢もちょっと下みたいやし。別人なんか?)

「あの、当主様」

恐る恐る、見上げながら話しかけてくる忍の頭に、俺はぽんと手を置く。
笑いたいわけではなかったが、思わず苦笑がもれてしまう。

「透でエエよ。ふたりしか居らんのに、そないな呼び方されたら堅ッ苦しゅーて適わんわ」
「はい」

イツ花がそそくさと蔵の方へ行ってしまったので、部屋に忍を連れて行くのは俺の役目になった。
さっそく鬼退治に行くとなれば、身支度をしなければならないのだが、女子の着替えやら何やらを、俺の手ですることは出来ない。
ひとまず部屋に忍を待たせて、俺はイツ花を呼びに蔵へ行くことにした。

「――イツ花ちゃん」
「何でしょう? 透様」

ハタキを片手に、イツ花が振り返る。

「忍ちゃんの身支度、手伝うたってや。荷解きや、討伐に持って行くモンの準備は俺がやっとくから」
「はーい! ンじゃ、お支度が出来ましたら、今度こそ、本物の出陣の号令をお掛けくださいネ」
「なァ、アンタと昼子は――」
「イツ花の髪型や声色は昼子様のマネっこなんです! ここまで似せるの、苦労してるんですよォ?」

エヘヘと笑う少女からは、女神から感じたのと同じ威圧感はやはり、感じられない。
憧れて真似ているとイツ花が言うのは、おそらく本当なのだろう。

支度を整え、玄関に並んで立つ俺と忍に、初めての出陣に際する忠告をイツ花がしてくれた。
イツ花の「当主様、ご出陣!」の声を背に、出発しかけて、俺は大事なことに気がついた。

「悪い、イツ花ちゃん、これ預かっといて」
「え? 透様、眼鏡がなくて、お差支え無いのですか?」

自分自身、目が悪く、視界を矯正する為に眼鏡をかけているイツ花には、他の目的が想像できなかったのだろう。
驚いた表情で、俺の顔を見るイツ花の眼鏡を取り、代わりに俺が先ほどまでかけていた眼鏡をかけてやり――玄関先に置いてある鏡を差し出す。

「見てみ」
「ああッ!」

鏡の中のイツ花の瞳は、琥珀から灰に近い墨色に染め替えられていた。

「度は入ってへんから、イツ花ちゃんには向かへんと思うけどな。目の色隠したければ貸したるわ」

ははっと笑って、頭をぽんぽんとはたき、「ほな行ってくるわ」と告げると、自分の眼鏡にかけかえたイツ花は、何やら複雑な表情で俺を見ていた。

「透様は、眼鏡をお使いにならない方が、良いかと……」
「そうか? まあ、討伐の時は割れたらアカンから、言われんでも置いていくけどな」
「あの、透……ちゃん」

当主様とも、父とも呼ぶなと言ったため、どう呼べば良いのか困惑している忍は、俺を呼ぶのに若干ためらいがあった。

「忍ちゃんは、怖かったら後ろに下がっとき」
「……うん」

素顔を見せると、目を逸らされる。反応から察するに、俺はやはり忍に怖がられているのだ。
血の絆があるから無条件に好かれる――なんて、期待していたわけではない……けれど。

(慣れとるいうても――嫌われるのは、あんまエエ気分や無いな)

 

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高羽家青嵐記<幕間2>

「初代様、いる?」
「――呼んだか」

嵐の呼びかけに応え、何もなかった空間に、水浅葱の髪と琥珀の瞳を持つ女侍――水月初代が姿を現した。

「実はちょっとばかし、困ったことになっててさー。お知恵を拝借したくて、こうして来ちゃったってワケ」
「用件を言え」

言って、彼女は嵐が用意した卓につく。
もてなしのつもりなのだろう。卓の上には、湯気の立ち上る茶器が用意されていた。

女性の前で弱音を吐くのを是としない、嵐が相談を持ちかけてくるのだ。
余程、抜き差しなら無い状況にあるのだろうと察して、水月初代は動じず話を進めることにした。

「言いにくいんだけど……透ちゃんの失言が原因でさ。忍ちゃん、透ちゃんに惚れちゃったみたいなんだよねー」
「何故、そうなるのだ」

言って、水月初代は眉間を揉み解す仕草をする。

確か以前会った時に――宮城嵐の記憶を得た透(今は嵐だが)は、「忍は忍であり、黒蓉とは違う」と言っていた筈だ。
女性の扱いをよく心得ている嵐がそう言っていた以上、彼が現世において忍と黒蓉を混同するような振舞いをするとは考えにくい。

「んー……透ちゃんってさ、下界でずっと暮らしてたじゃん? 色恋のひとつやふたつ、経験あってもおかしくないかなーって、俺は踏んでたんだケドねー」

常世の記憶を現世に持っていくことが出来ないように、透が現世を生きる今の状態で、嵐が透の記憶全てを把握することは難しい。
嵐の予想に反し、透は「自分が異性からどのように見られているか」に関する観察眼が信じられないほど、曇っていた。つまり――鈍いのである。

透のこれまでの生を知らない以上、嵐の予測が外れるのも仕方が無いが――帳簿の見方や討伐の為の鍛錬に打ち込んでいた透は、実は異性に縁が遠かった。
復興もままならぬ京の街では、嵐が生前通っていたような花街もまだなければ、通りを女子が出歩くことも少ない。

経済の流れから人々が何を思っているのかを読み取り、駆け引きをしたり街人と交渉したり、復興に関する投資をすることに関してはほぼ一流といっていい腕を持つ透だが、色恋沙汰となると壊滅的だった。

「巡り合わせってか、多分。忍ちゃんが好きになっちゃうタイプの、『不器用なオトコ』に、透ちゃんが……たまったま、運悪く? あてはまっちゃった、ってカンジ?」

「……成程。『嵐』ではなく、『透』が接した事が裏目に出たという訳か」
「初代様。その言われ様……俺、けっこー傷つくんですケド」

透の人物像に好感を抱く娘であれば、嵐には惚れないと言外に告げられ、彼は思わず苦笑する。

忍の涙に動揺したことで、現世で透の中に眠っていた『嵐』は揺り起こされ、透を通じて忍を見て――気付いてしまった。
忍が、「交神の儀に行くな」と泣いた理由に。

「女の子ってさー、ホント、いつの間にかオンナになっちゃうんだよね。……あれは、恋する女の瞳だよ。透ちゃんも、罪作りなことで」
「他人事のように言っている場合ではあるまい。透殿が交神に行けず、忍殿も交神の儀を拒むとなれば高羽の血が絶えてしまうぞ」

身も蓋も無い水月初代の物言いに、嵐は思わず卓に突っ伏してしまう。

「だーかーらー、こうやって相談に来たんじゃん! 初代様なら、何かイイ知恵無いかなってー……」

卓に突っ伏したまま、顔だけ起こして見上げているので、初代を見る嵐は自然と上目遣いになる。
頼みごとをしているというより、叱られている子供のように見えるのは、きっと今でも、お互いにとって『始祖』と『子』の関係が抜けきっていないからなのだろう。

嵐の淹れてくれた茶を啜り、良い知恵かどうかは判らないが――と水月初代は切り出した。

「それならば、残る選択肢は『結魂』か『養子縁組』しか無いのではないか?」
「やっぱ、そうなっちゃうよねェ」

のろのろと体を起こし、髪をかき上げながら、ふう……と嵐は溜息をつく。

「出来れば、後者はナシにしたいな。俺たちの我侭で、キツい道を歩んでもらうコトになるお家事情だからさ。……出来るだけ、他家のお子さんを巻き込みたく無いんだよね」
「では、さっさと『結魂の儀』を執り行えば良かろう」
「忍ちゃんの心情考えると、ソレも難しいかなって思うんだよね」

嵐の視線が泳ぐのを、水月初代は見逃さなかった。

「嘘をつけ。結魂に抵抗があるのは君だろう。――おおかた、黒蓉殿と忍殿、双方に不義を働くようで、透殿が他家の娘と結魂の儀を執り行うのが心苦しいのだろうが」
「――っ、お見通し? 敵わないなー、アンタには」

水月初代の琥珀の瞳を受け止め、嵐は困ったように苦笑した。

「君がどうしても、結魂を受け入れられないなら……忍殿を説得するしかないぞ。彼女が頑なに拒んでいるのは、『透の交神』なのだろう?」

交神は、血の絆を以って子を授かる行為だ。
神の血と人の血、一族全員の心をひとつにした祈りの念がなければ、子を授かることが出来ない。
相手の神によっては、互いの肉体に触れることなく子を授かることも可能なのだが、透も忍も、まだそのことを知らない。

一方、結魂は『魂の絆』を以って子を授かる行為――すなわち、互いの心の傷や、大切にしている想いなどまで全てを相手にさらけ出し、また自らも相手の心を丸ごと受け止める必要がある。
そのため、絆や繋がりといった点では、ある意味『交神の儀よりも深い、情や相互の理解』が必要となる。
宮城嵐として、御室川黒蓉との間に結魂によって子を設けたことのある嵐には、それがわかっているから――透として他家の娘と結魂を行うことに対し、許容できない心の壁がある。
その心の壁を取り払うことが出来ない以上、透が結魂の儀によって子を授かるのは、おそらく不可能だ。
そして、甚だ勝手な想いだと頭では判っていても、忍に結魂をすすめるのは黒蓉の面影が邪魔をして切り出せずにいるのだろう。

透が交神に対して「どっちでもいい」と一見無責任ともとれる発言をしたのも、心の奥底に眠る『嵐の、透と忍が他家との結魂を拒む願い』が原因なのだが、忍は当然それを知らない。

「やれやれ。全く、世話の焼けることだな。――では、君が言い出せないなら、イツ花から、透殿と忍殿に『結魂か、養子縁組か。どちらかを選ぶように』提案させよう」
「わかった。――俺は、ふたりがどっちを選んでも、その選択に従うよ。……今、生きているのは、透ちゃんと忍ちゃんなんだから」

覚悟を決め、そう告げると、嵐は再び透の生きる現世に帰っていった。

異説・片瀬家の系譜<番外1・第3幕>

片瀬家の系譜<番外1>

「来た早々で悪いが、嵐。君には、地獄に行って貰う」

「当主様の命令とあれば、何なりと」

悲願達成を目前に迎えた片瀬の家。

嵐の推測は外れではなく、黄川人の言う『素敵な庭への鍵』を集め終えた後、突如として出現した赤い印へと踏込むと、そこは地獄の入り口だった。
三途の川を越えて、針の山か地の池を越え、砂漠を抜けると朱点童子の待つ修羅の塔への入り口がある。
討伐隊は、これまで幾度も地獄の中と、京の家とを行き来していた。
地獄の中を徘徊する名も無い鬼達を狩れるようにならなくては、到底朱点になど挑めない。

当主となったものには、一族の能力が数値として『視えて』しまう。
嵐本人が『この時期に迎えるほど高い能力ではない』と言うのが頷ける、言い方は悪いが中途半端な数値だった。
際立って高いのは、風に関わる数値だろうか。
秋征が使いこなすことが出来ずにいる『名弓雲破り』での属性が上乗せされれば、地獄の鬼に対しても渡り合えるかもしれない。

だが、現状のまま、朱点に挑むのは難しい。

つい先日、朱点と八ツ髪に敗走を喫した経験のある森香は、それが痛いほどよくわかっていた。
朱点に挑む為には、地獄に滞留して時登りの笛で時間を巻き戻し、何度も何度もただひたすらに鬼を狩り続けて体力その他の数値の底上げを図るしかないのだ。

「秋幸、秋征。付いて行ってくれるな? それから、一匹でも多くの鬼を狩れる様に、今月はみさおを隊長にする」
「うん。嵐くんは僕が守るから安心してくれていいよ」
「……男に『守る』って言われても嬉しく無いなあ。女子に守られるのはもっとイヤだけどねー」
「嵐、実家じゃどうだったか知らないけど、後列に下がっててくれよ。ウチじゃ基本的に弓は後方支援担当だからな」
「了解。我侭言ってもいいなら、女子のみさおさんを前列に立たせて俺は後列っての、いささか信条に反するんだけど……実力不足ならまず、足をひっぱらないように務めないとね」
「大丈夫よ。先手さえ取れれば、わたしの丘鯨で殲滅できない雑魚はほぼ、いないから」

現在家に居る女子で唯一、来訪時に「男より逞しい」と言われなかったみさおだが、いざ討伐となれば、女だてらに重たい大筒を担いで豪快に戦う。
しかし、こうして座敷に居れば髪や瞳の色を除けば市井の娘と変わらない、年頃の若い娘だ。
軽防具しか付けられず、防御面に若干の不安が残る大筒士は親玉と戦うには不向きと判断され、片瀬家では初陣の者が能力値を底上げする際に同行することが多かった。

つまり、今回の出陣では決着をつける気が無いのだと、討伐隊に指名された双子には解る。

「それと、言いにくいのだが……これも、初代からの命令でな。嵐、討伐から帰ってきたら『交神の儀』に臨んでもらう事になる。奉納点が6万点台になるまで帰ってくるな」

「……8ヶ月の俺を養子に迎えた理由はそれでしたか」

奉納点で、相手が誰であるのかは察しがついているのだろう。一瞬、ハッとした表情になった嵐は、かすかに苦笑した。
元服後は心身共にバランスの取れた時期でもあるが、身体能力を底上げして戦わせることを考えるのであれば、もう少し若い者を養子として迎えた方が良いに決まっている。
迎えた直後から第一線で戦うことが出来るほど高い能力を有している者ならば、それでも構わないのかもしれないが、育て上げる必要がある者としてはやや不向きだ。

「他の年長者の方を差し置いて、っていうのは正直気が引けるんですけど」

「いいの。わたしも森香姉も気にしないし。片瀬の家訓として、男は結魂や交神に自分の感情挟む余地無いの知ってるから。逆に『ちょっと気の毒かしら』って思うわよ」

片瀬の家訓として、個人的な感情で相手を選ぶのは女子の特権とされている。
男児は、奥義を継承しない場合のみ相手を選ぶことが許されるが、他家から『血筋が欲しい』と乞われれば絶対に断れない。
槍家系の跡取りでない秋征は、比較的自由が選べる身だ。その理屈で言えば、嵐も選択の自由が適用されてもおかしくは無い。

「おそらく初代は、『迎えた血筋が絶える事に対する懸念を払拭しておきたいのだろう』と私は思うのだが……すまないな。呪いを解くことが出来る目前にあって、このような頼みをしなくてはいけない当家の不甲斐なさを――恨んでくれても構わない」

「嫌だな、玲様。お美しい方の頼みをきかない訳にはいかないし、恨んだりなんてしませんってば。だから、そんな風に眉間にシワ寄せるのナシ! 美人が台無しですよ」

「ぷっ……あははは!」
「そうそう、女性はやっぱり笑っている方が――って、どうしたの? ユキ君……と、マサ君も」

何がそんなにおかしいのかと、森香を不思議そうに見ている(というより固まっている)双子に、嵐は思わず声をかけた。

「いや、珍しいものが見れたなーというか」
「当主様を女扱いするヤツも珍しいけど、こんな風に笑った顔が見られるのも珍しいぜ」
「というより、片瀬の女は総じてイツ花ちゃんに『その辺の男より逞しい』なんて言われちゃうもの。だから、当主様じゃなくても、こんな風に嬉しいこと言ってくれるの嵐くんが初めてよ。秋幸君も秋征君も見習いなさいな」

目の端にうっすら涙を浮かべるほど笑った森香を見て、討伐隊の面々は三者三様の感想を述べる。
みさおに至っては、双子を軽く窘めていた。

「ああ、こんなに笑ったのは子供の頃以来じゃないかな。――さて、嵐」
「何でしょう」
「戦装束だがな、まだ仕立てあがって無くてな。悪いが、片瀬の色で仕立て直した、君の装束が出来上がるまでは前のを使ってくれないか」
「前の? 俺はソレでも構いませんが……態々仕立て直してもらうのも気が引けるし、片瀬の先人のどなたかが以前使っていた余りでも、差し支えないですよ」
「特別製なのだろう? 君のは。それに先人の余りでは君や秋征には着丈が合わない」

どのみち仕立て直しに出さなければならないのなら、新しく仕立てる方が職人の手間も省けて一族の士気も上がるだろうと森香は踏んでいた。
それに、嵐の戦装束は通常の仕立てと違い、羽織の内側に物入れがあったり、表にも装飾が施されている一点ものを好んで着ていた――と森香は伝聞で知っていた。
残念ながら、当主の間に挨拶に現れた嵐は、戦装束から着替えてしまっていたので実物を見る機会は無かったのだが。

「あ、嵐くんの特製戦装束だよね? 当主様、せっかくだから同じの僕にも仕立てて欲しいな」
「マサ、あのど派手な装束、お前も着る気かよ?! 当主、オレのは仕立て直さなくて良いからな!」

『先人の使っていたもので良い』という嵐の反応も予想外だったが、双子の反応もまた森香の予想の範疇を超えていた。

 

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