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異説・片瀬家の系譜<番外1・第2幕>

片瀬家の系譜<番外1>

「嵐の命、本日只今より
玲様にお預けいたします。存分にお使いください!!」

異国から来た青年は、当主の顔を正面から見据えてそう告げた。
嵐が面を上げると、澄んだ鈴の音と共に派手な羽の髪飾りが揺れる。
深緑の髪に、琥珀の瞳。双子の艶やかな若葉色や鬱金色とは趣を違えているが、心に風神の守護、技に土神の守護を得た片瀬の双子――秋幸、秋征と並ぶとまるで本当の兄弟のようにも見える。

初代・片瀬玲のたっての願いで迎えた養子は、現当主・森香のみに見せられた書付や、実家での幻灯等から思い描いていた姿とは大きく印象が異なっていた。

(もっとこう――くだけた挨拶をするのかと思っていたが……警戒されてしまったかな)

「初めまして、嵐くん。ユキ君と並ぶと、僕たち三つ子みたいだね」
「よろしく、嵐。おれの事は秋幸でもユキでも好きな方で呼んでくれていいぜ」

(おや? 秋征の方が懐くのは珍しいな。あの「座敷わらし」がねえ……)

髪色を見て判るとおり、心に風の加護を受けた双子は、何を考えているのかわからないところがあり、当主にとって常に悩みの種でもあった。
討伐に出せば、お互い傷を負うたび回復を進言してくる。

しかし、隊長が体力半分持っていかれるような事があっても、放っておけば治るとばかりに隊長狙いやら、やたら効果が派手な攻撃術を提案してくるのだ。
どうやら、双子の世界は互いが互いを中心に回っているらしい。
そんなに心配なら片方を留守番にするかと言ってみたら、唯一品の槍や、先祖が心血注いで育てた特注剣を質入して家出しようとする有様。
つまり、引き離せないのだ。

その双子が、初めて自分達以外に関心を持った。
これは、喜ばしい変化なのかもしれない。

「じゃ、マサ君とユキ君でいいかな?」
「うん。あ、そうだ当主様。せっかくだから嵐くん囲んで幻灯撮ろうよ」
「あ、ああ。では街へ出ようか」
「……明日は雨かしらね」
「しっ! 滅多なことを言わないでくれ。双子が機嫌を損ねたら、当主の言うことも聞かないんだから」

嵐を挟んで、三人並んで歩く双子を追うように、片瀬の現当主・森香とその妹・果林が並んで歩く。

通常、長子が兄・姉となるのだが、「双子に限り後から生まれた方が兄または姉」という家訓に従い、片瀬の家では槍家系の二子秋征が兄、薙刀家系の二子森香が姉だ。
序列に従い、現当主は森香なのだが、風の双子は当主の威厳をもってしても御しがたい。

 

街並が気になるのか、嵐は先刻から周りを見回している。
ふと、彼は振り返って森香に問うた。

「ひとつ聞いても良いですか?」
「ああ。何かな」
「失礼を承知で申し上げますが。……片瀬の家は、悲願成就を胸に、ひたすら邁進していらしたのだという印象を受けました。大願成就も近い、この時期に俺を迎えた理由は何でしょう」

やはりきたか、と森香は息を呑んだ。

「君を迎えたのは片瀬初代の願いだ。私も詳しくは知らない。すまない……それより、『大願成就が近い』『片瀬が悲願に向けて邁進した』と判断したのは何故かな?」
「街並です。武具屋や雑貨屋、宗教設備は充実してますが、その他の所謂『娯楽』に関わる部門への投資は切り捨てていらっしゃるのではないかと」

品揃えを見れば復興の度合いが知れる。
武器防具の充実振りは、片瀬が商業部門への投資をそこそこしてきたことの証だ。

宗教部門は、一族が子を授かるのに必要な「交神の儀」の奉納点に直結しているし、刀鍛冶を呼ぶことが出来れば戦力の大幅な増強に繋がる。
漢方薬屋の品揃えを充実させれば討伐で多少の無茶もきく。

つまり、優先的に資金を投じてきたのが討伐に直結している所に限られている――故に『悲願成就に向けてひたすら邁進した一族』と判断できる、という訳だ。

「娯楽を切り捨てているというのが何故解る?」

「俺の実家――水月の初代は……そうですね、一言で表すなら『変わった』方なんですよ。『武具など拾い物で充分、そんな血腥いものにつぎ込む余裕があるなら、娘達が美しく着飾って人生を謳歌できるように着物を仕立てるか、幻灯枠が追加されるように娯楽部門に投資しろ』と、言ってのける剛毅な女侍です――ほんの少しだけ、貴女に雰囲気が似ています。……玲様」

そこまで言って、嵐は苦笑する。そして、視線を森香の顔から再びぐるりと街並へと見渡し――告げる。

「その水月初代の方針に従って復興させた街並と、この街並は大いに違っています」

それに俺は、朱点打倒のみを掲げて生きた者達の街を一度、見たことがあるから――と、嵐は一瞬だけ、懐かしさと淋しさの入り混じったような微笑を見せた。

「嵐くん? 当主様も何か難しい顔してるね」
「当主様、あんま細かいこと気にしてたらハゲるぜ」

足を止めた嵐に気付いて、双子も振り返る。
「ユキ君、淑女に向かって『ハゲる』は無いでしょー!」

嵐は笑って、秋幸の肩を叩く。

「あとね、当主様。ユキ君とマサ君から聞いたんですよ。術を覚えるために、ふたりは『朱ノ首輪』使ったんでしょ? 主力の二人に、家出されるリスクを賭けてまで覚えさせたい術があるってことは――相当、切羽詰ってる。だけど、ソレを実行するだけの見返りが期待できる――ここまで来たら『悲願成就』しかないよね……って、思ったんですけど。違いますか?」

(一を見て十を見通す、か――成程な。初代が求めたのはこれか)

くだけた口調の方が作っている彼なのか、固い口調の方が作っている彼なのか、森香にはまだ見極めが付かない。
だが、表情を見る限り、秋幸や秋征に対して話しかけるときや、その逆の時。嵐の良く変わる表情は、作った表情ではなく内から出てきた感情そのままの、歳相応のものに見えた。やはり、歳が近く、考えることも似ているものには心を許すことが出来るのだろうか。
少なくとも、双子には多少なりとも打ち解け始めているのではないか――と森香は思った。
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異説・片瀬家の系譜<番外1>

無限空間の黒。
天も地もわからない空間に、巨大な水鏡が設えられている。
水鏡の前に立つのは、水浅葱色の髪に琥珀の瞳を持つ――運命の一族の始祖。

「嵐。いるのだろう? すまないが手を貸してくれ。君の力が必要なんだ」

「はいはい居ますよー。……で、何ですか初代様ー?」

りん、という鈴の音と共に、深緑の髪に羽飾りをあしらった青年がどこからともなく姿を現す。

「俺が此処にこうしている間、透ちゃんてばスヤスヤ寝こけちゃってるワケでー。
こんな頻繁に、俺を呼び出してて大丈夫なの? 初代様」

魂の奥津城に、生きている者は出入りすることが出来ない。
高羽透の命数は未だ尽きて居ないので、この場所に現れるとき――透は必然的に「嵐」になってしまう。

「問題ない。我々の体感として時の流れがあるように感じるだけで、現世での時間は止まっている」
「成程。……ってか、俺さぁ? 今更だけど、アンタのこと尊敬しちゃうなー。そんな過酷な役目、よく引き受けたよね」

永劫にも感じられる時を、血を分けた子らを何度も何度も見送るなど正気の沙汰では無い――と嵐は評する。

「……だから私は選んだのだよ。人ではない、永劫の時を生きる者を――共犯者としてな」

目を伏せ、穏やかな静謐をたたえた表情の水月初代を見て、反射的に嵐は「しまった」という表情を浮かべる。
が、水月初代が再び視線を戻す前に、表情を取り繕うのは忘れてはいなかった。

「――私のことは良い、本題に入るぞ。
すまない嵐、君にはまた異国を旅して貰わねばならんのだ」

「嫌だなーって言ったら、どうなっちゃうのかナー?」

「君が本気で嫌なら、無理強いはしない。
私が先方に断りを入れれば済む話だからな――ただ」

水月初代は妙に歯切れが悪い。
短い付き合いでは無くなって、嵐にもなんとなく予想がついてしまった。

「天来の娘たちが、嘆き悲しむことになるだろう」

「はー……しょうがないなあ。
可愛い女の子のためなら断れませんー! で、今度はドコに行けばいいワケ?」

「片瀬の家に。――きついぞ」

「あんたがそう言うってコトは、よっぽど過酷なんだろうねー。……片瀬初代って、美人?」

「いや、男だ。面影は……そうだな。君と生前とても仲の良かった、侑に似ている」

「やっぱ断ってイイ?」

運命の神様というものが居るのなら、洒落が強すぎていっそ悪意すら感じる。
が、此処まで来ると逆に笑えてくる――と嵐は苦笑した。

「――すまんな、凛音殿。我が力及ばず、君の一族の助けになること、叶わず……だ」

嵐と向き合い、背を向けたまま呼びかける水月初代の言葉に応えるかのように、水鏡の水面が揺れる。

「いえ、良いんです。
――三つ目の呪いを回避する方法は、既に見つけてありますから」

鏡の向こうから響くのは、少年独特の高く済んだ声。
水月初代が鏡の真正面に立っているので、衝立のようになって、嵐には少年の顔を見ることが出来ない。

「三つ目の呪いって何だよ。そんなモノがあるなんて俺、聞いてないぜ」

「我々の一族には無かった呪いだ。
君が知らないのも無理はない――天来の家ではな、『男児は全て、生まれて一月も生きることが出来ない』のだよ」

「私は、天の助けにより一年と数ヶ月の命を得ました。
しかし――男にしか効力の無い呪いなら、女児のみを授かるように交神の儀を執り行えばよいのです。
ただ……それだけのこと」

「そんなことが可能なのか?」

「あ、こら! 嵐――凛音殿の顔を見るな」

色々と衝撃が大きすぎて、嵐の口調から軽口を叩くだけの余裕が消えている。
思わず身を乗り出して、水鏡の向こうに居る凛音に近づこうとして、水月の初代に阻まれそうになる――が。

水月初代の制止は僅かに間に合わず、嵐はしっかりと『異国の始祖』の顔を見てしまった。
現れた面影を見て、嵐は零れ落ちそうなくらいに目を見開く。

「遥?!」

「嵐殿、ですね? お初にお目にかかります。
私の名は『天来凛音(アマキ リンネ)』。あなた方と異なる国の、運命の一族の始祖……です」

金糸雀色の髪に向日葵色の瞳を持つ少年――異国の『運命の一族の始祖』だという少年は、嵐にとって、侑以上に縁の深い面影を宿していた。
ふわふわとした少し癖のある髪を、切りっ放しにしたような髪型に、ぱっちりというよりはくりっとした目が印象的な、愛らしい少年。
嵐によく似た、風の守護が現れた髪色が自慢だと言っていた息子――遥に、生き写しだった。

「――初代様……だから、『凛音さんの顔を見るな』って、言ったんだな」

他人だとわかっていても、黒蓉によく似た面影のある忍を見捨てられなかったように。
凛音の面影に遥を見出してしまえば――同じように、嵐は凛音を見捨てられる筈が無い。
ならば最初から、凛音を使えば嵐に頼みを聞かせることなど容易い――しかし、水月初代はそれをしなかった。

「はは、何つーか……俺も遥も、よくよく『養子縁組』に縁があるのな」

水月家で嵐がその生涯を閉じた後、是非にと望まれて遥は異国へと渡った。
美しく強い姉達や、元気いっぱいの可愛い妹に囲まれて、異国の遥も幸せそうだった。
水月の家も、養女に迎えた紅音が呼び水となったのか……今では念願の女児に恵まれている。
覚悟を決めた嵐は、水月初代の琥珀の瞳を正面から受け止めた。

「行くよ、片瀬の家に。――でもその前に、いっこ訊いてもイイ?」
「何だ?」
「片瀬の初代サマは、何で俺をお望みなワケ? 悪いケド俺、男相手にどうこう……は正直御免被りたいな」

恐る恐る、といった面持ちで問う嵐に、心配するなと水月初代は微笑んだ。

「稚児というわけではないから安心していい。今回送り出す君は、成人男子の姿だからな。
――『運命の一族の始祖』のみが、此処『魂の奥津城』に出入りできることは、君ももう理解しているだろうが」

「あ、そういやそうだっけ。ん? ……でも、だったら何で、ココにその片瀬初代が居ないワケ?」

納得しかけて、嵐はふと気がついた。
そもそも片瀬初代がこの場に居れば、話はもっと単純だっただろう。

「片瀬の『氏神の社』から、3柱の氏神を天来の社に移す儀式の準備に入っていてな――今、此処に姿を現すことができないのだ」

「成程、交換条件ってワケか。
――つまり、天来に氏神を分社する交換条件として選ばれたのが俺――ってことでイイのかな?
……って、俺って神様三人分?! マジでー?!」

女性の前だとつい見得を張ってしまう嵐だが、さすがにそれは過大評価では無いのかと目を見張る。

「ああ、2柱はどちらかというと、君と炎が幸せな生涯を過ごせたことへのご恩返しのようなものだ。
――まぁ、私も正直……奉納点3万点台の氏神と、君とで釣り合いが取れるのかは少々疑問ではあるがな」

「能力で言うなら間違いなく、炎ちゃんとか遥の方でしょ? 何で俺?」

「『かの神を殴る役割は自分がやる』と君が言っていたのを聞かれてしまってな――それを、片瀬の家で叶えて欲しいと。透の魂を持つ――君に」

「――成程ね……そりゃ、確かに過酷な道程ですコト」

道理で止めようとするわけだ――と、嵐は水月初代に困ったような笑みを返した。

「初代様、もしかして結構過保護だったりする? ――ってか、信用がないなあ、俺。
嵐ちゃんってば、『やるときはやっちゃう子』ですよー?」

「馬鹿者。かわいい子らを、死地に放り込むと解っていて胸を痛めずにすむ母がいる訳が無かろう」

「ありがとう初代様。――その言葉だけで、充分な贈り物だよ」

贈る言葉ではなく、きっと初代の本心なのだろう。嵐にはそれが少し、嬉しかった。

「――嵐。君は決して、ひとりでは無いのだぞ。それを決して、忘れるな」

何やらいたたまれなくなった嵐は、口元に手を遣り、ふいと初代から顔をそらす。

「もし叶うなら、黒蓉ちゃんにゆっといてー。『長く待たせることになっちゃって、マジでゴメン』って」

「断る」

取り付く島も無い切り捨てるような態度に驚いて、俯きかけていた顔をあげると、気丈に微笑む水月の始祖と正面から目が合った。

「『やるときはやる』子なのだろう? 君は。
――細君には、自分の口から伝えるのだな。君の旅した、長い――長い物語を。時間は、幾らでもあるのだから」

「ん。っじゃ、行って来ます! あ、そうだ初代様。アレやって、アレ」

水月の始祖に背を向け、新たな世界に旅立ちかけた嵐は、ふと思い立ったように振りかえる。

握った拳を、初代に向けて差し出す。

「見送りの祝福の言葉は――不要か」

嵐の意図を理解した水月初代は、自らも拳を握り、嵐に応えた。

コツン――拳の上に軽く一回。
コツン――拳の下から、軽く一回。
コツン――拳と拳を正面から、軽く合わせる。
掌を開いて上に――ぱあんと、手と手を打ち鳴らす。

透の魂は再び「嵐」として、水月とも宮城とも違った想い出を得ることになったのだった。

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高羽家青嵐記<幕間>

「こんちはー初代様。ってか、今は俺も『初代』だっけ。はは、何かヘンな感じだなー」

魂の奥津城に再び姿を現した透は、前回女神の元を訪れた時と比べて、漂わせる雰囲気と顔に浮かべる表情――そして何より、特徴的な瞳の色が異なっていた。
瞳の色を隠す為の眼鏡を外した透は、火神の守護の証である、真紅の瞳を持っていた。

しかし、今、彼の瞳は大地の守護を得た者に特徴的な、琥珀色。
その変化が示すのは――情報、すなわち記憶……人格の変化。
今ここにいるのは、透の魂であって透ではない。かつて水月の血族に存在した、同じ面影を宿す魂――嵐。透の過去世。

「可愛い細君を、あまり待たせるものではないだろう? かの神を殴る役割は、私が引き受けても良いのだぞ」

「キャットファイトは勘弁してー! なんつって。……俺の黒蓉ちゃんは、ちゃんと待っててくれっからいーの。
それにさ、『会えない時間に相手を想う』ってのも、イイもんだよ?」

「……本当に、良いんだな。おそらく君は、誰よりつらい思いをすることになるぞ」

「だったら、余計にアンタに任せる訳にはいかないっしょ」

ふう、とため息をつくと、嵐は肩をすくめた。一瞬だけ真顔になるが、すぐに何時もの飄々とした笑みを浮かべて言い直す。

「いや、アンタの性分からして、朱点を巡る因縁に恨みつらみなんて抱かないっしょ?」

「そうだな。……巻き込まれた、数多くの子等の無念を思うと何とか溜飲を下げたいと――思わなくもない。
だが犠牲者を徒に増やすよりは、救える子らを一刻も早く、呪いから解き放ってやりたい」

「ほらね。だからコレは、やっぱ俺がやるべきなんだよ。――それに……もし、ただの他人の空似だったとしても、さ。
俺は……あの女を許すことは出来ない」

生まれ変わることを決め、魂の奥津城から旅立とうとした嵐は――水鏡で次に生まれてくる『始祖の娘』の姿を見てしまった。
自分ではない自分――宮城嵐が、妻にと望んだ女性によく似た面影のある――長い髪を二つに束ねた少女を。

輪廻の中にある全ての魂が通り抜ける『魂の奥津城』から見ていた嵐には、彼女が全く別の魂を持つ、黒蓉とは別の存在であることはわかっていた。
だがそれでも――今後彼女を待ち受ける過酷な運命を思うと、護りたい――傍にいて支えたいと想う気持ちを止められなかった。

始祖と娘では、決して結ばれることはない。
それが解っていても……御室川黒蓉によく似た面影を持つ娘を放っておくことなど、嵐にはどうしても出来なかった。
だから、次なる『運命の一族の始祖』に生まれ変わることを願い出た。

現世の理として、過去世の記憶や人格は余程のことが無い限り、来世で姿を現すことはできない。

滅多に見せない、彼の本気の決意を見て取り、もうひとりの『運命の一族の始祖』も心を決めた。

「わかった。では、水月の始祖として最後の禁術を君に施そう。――我が血脈に宿りて、異なる未来を旅した、嵐の魂の記憶よ。
今ここに、高羽透の魂への回帰を果たせ――」

水月家の始祖が詠唱を終わると同時に、ふわふわと漂っていた蛍火が、半透明になった透に溶け込んだ。

「……あったかいな。本当に、幸せに過ごさせてもらったんだな――異国での俺は」

かつて、水月嵐であった頃に……この『魂の奥津城』で始祖の水鏡を通じて、異国で過ごす自分の姿を垣間見たことが何度もあった。
けれど、ただ「見ている」のと、追体験として実際に自分の経験として知るのとでは、記憶の重みや厚みが全く違う。

「あーあ。常世の記憶は現世に持っては行けない……かぁ。切ないよねえ――でも、さ」

嵐の姿が、だんだん朧になっていく。
現世での透が、眠りから覚めようとしているのだ。

「これでイイんだよな。――あの子は……忍ちゃんは、忍ちゃんなんだから」

魂に刻まれた、誰かを本気で愛した記憶。残っていた、心残りやわだかまりを解くことが出来た記憶。それはきっと、心の奥底で今生での透を支える力になるだろう。

嵐――今は透だが――の魂が現世へと戻り、魂の奥津城には水月の始祖がひとり残された。

「まったく、世話の焼ける。――これでは私も、高羽の物語が幕を閉じるまで、生まれ変わることが出来ないではないか」

生きていた頃は生きていた頃で、地上の一族や街の住民や、果ては天界までもかき回してくれた、その名の通り嵐のような子供だった。
死んだら死んだで、今度は『運命の一族の始祖になる』と言って聞かない。
いっそ氏神にでも祀って神に封じてやろうか――と、思わないでは無かったが、『惚れた女に会えなくなるからそれだけは絶対に嫌だ』と泣きつかれた。

(やれやれ。私は、娘たちだけでなく――息子たちにも、弱いか)

そして幕間の時間は終わり――再び、物語は現世の高羽透により語られる。

 

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高羽家青嵐記・壱

――目覚めなさい。

女神の声に呼ばれ、目を開くと、俺の目の前には四人の女――いや、此処が天界であることからして、おそらくは四柱の女神。
朱点の呪いにより、俺には常人の何十倍もの速さで成長する「短命」と、神の血を持つ者との間にしか子を成す事ができない「種絶」が科せられたことを知らされた。

(ソレ、おかしく無いか? あの赤鬼が言うてたんは『父ちゃんと母ちゃんの分まで長生きするんだゼ』――寿命のことしか、言うてへんやろ)

短命の呪いが有る以上、放っておくだけで俺はすぐに死ぬ。
つまり、大江山の赤鬼にとって、脅威でもなんでもない。

それなのに――強大な神の力を血脈に取り入れる――つまり手間隙掛けて強敵をつくるようなことをする必要が、どこにある?
女神の声はさらに告げる――目の前の四柱の中から、最初の子の――母となる者を選べと。

「断る」

斬って捨てるような言葉に、女神達は揃って困惑の表情を浮かべた。

「何でわざわざ、呪われた者を増やす必要があんねん。そんな厄介な呪い貰うのなんざ、僕ひとりでエエやろが」

四柱の女神の後ろに立つ、光輝そのもののような眩い存在から目を逸らさず、俺はさらに言葉を続ける。

「子を為せっちゅーことは、その子にも呪いを引き継がす、っちゅーこととちゃうんかい」
「皆、下がりなさい」

一段高い所から眩い光輝の女神が命じると、四柱の女神も、周りにいた天仙も全て退出した。

「あんたが――太照天」

光輝は白妙の衣を纏い、髪に花飾りをあしらった、冷徹な表情を浮かべる女性の姿になった。年の頃は、二十二、三ぐらいだろうか。
俺の本当の母だという、お輪にどこか面影が似ている。そして――琥珀の瞳。

(――間違いない。俺はこの女――いや、この気配……威圧感に会うた事がある。昨日今日の話やない……もっと前や)

「たった二年。そのわずかな時間で、ご自分ひとりのみで朱点を倒せると、本気でお思いか」
「やってみせる」
「人は儚く、脆い。不測の事態で貴方が命を落とせば、全てが泡沫と消えるのですよ」
「つまり、俺に子を為せっちゅーんは、そっちの都合ってことやろ。保険のためにな」

何故天界は、俺にだけ手を差し伸べた。
大江山で命を落とした武士など、それこそ掃いて捨てるほど居るというのに。

先刻『希望はあなたの血の中に』と女神は言った。
そして、女神の顔を見て、疑念は確信に変わる。
血は、母から伝えられるもの。そしてどこかお輪に面影の似た女神、太照天昼子。――鍵を握っているのは『お輪』だ。
おそらく、お輪の血を受け継ぐものでなければ――朱点童子を倒すことは適わないのだ。

「――神と人が交わると、稀に両親を越える力を持った御子が生まれる。それが、朱点童子」

先に沈黙を破ったのは女神だった。

「今、私からお教えできるのは、これだけ。朱点童子を倒せるのは、朱点童子のみなのです――だから貴方には、子を為して貰わねばならない。女神との間に、子を」

そう言いながら、女神――太照天昼子は自らの衣に手をかけた。

「そこまでや。――まったく……体の張りどころを知っとる女は、厄介やの」

衣を脱ごうとした手を止めさせる為に、掴んだ手首を離す。

「では、あの四柱の中から、最初の子の母となる者を選んで頂けますね」
「――飛天ノ舞子」

家に送ると言っていた武具の中に、風の加護を受けた薙刀があった。
生き残る為に、少しでも有利に働く相手を。ただ、それだけのこと。

「おめでとう。かわいい女の子ですよ。この子に、名を」

時間の流れが曖昧な中、授かった子は女の子だった。
ぱっちりとした瞳は、殆ど常人の黒と変わらないほどの――深い藍色。

(――俺に似ぃひんで、ホンマに良かった)
「名は、『忍』。しのぶちゃんや。そう呼んだって」

赤子に武器は持たせられない。巻物や指南書も読ませることは出来ない。
だから俺は、子が赤子から幼子になるまでのわずかな間に、鬼を狩るために戦う力を身につける必要があった。
そして娘――忍は、天仙に育てられることになった。

→高羽家青嵐記・弐へ
←高羽家青嵐記・序へ
→高羽家青嵐記・幕間

高羽家青嵐記<序>

「透。気ィついとるかもしれへんけどな。お前のホンマのお父ちゃんとお母ちゃんは別におんねん。
ワシが昔世話になったお侍さんでな。大江山で亡くならはった、源太さんや。今日、神さんとっから迎えがくるから、詳しいことはそっちで聞きや」

「……は? 何やそれ」

自分でも間抜けな答えだと思う。
鏡を見ていたわけではないが、きっとこのときの俺はさぞ間の抜けた表情をしていたことだろう。
俺には母親が居ない。
いや、居なかった……と言う方が正しい。つい先日、親父は嫁取りが決まったのだから。

俺だけでなく、朱点童子の襲撃で荒れ放題の京の街で、二親揃って健在な子供の方が珍しい。

商家に奉公に来た父がいるお陰で、俺は大江山の鬼の襲撃後冬を越せた『幸運な餓鬼』の中に入るわけだ。
そして、小さいながらも暖簾分けを許された父――今、俺の目の前に座っている、肌の浅黒い短髪の男だ――息子の俺が言うのもなんだが、とても俺のような大きな子供が居る年齢には見えない――の言葉に、俺は動揺すると同時に(ああ、やっぱり)とどこか納得して居たのもまた、事実なのだった。

顔立ちがどう――という訳ではない。
何時だったか、寺子屋で隣に座っていたクソガキと喧嘩して以来、俺は家の外に出るときはずっと、親父が買ってきてくれた、破璃の眼鏡をかけるようにしている。
別段、視力に問題があるわけではない。

問題があるのは――瞳の色だ。
夕暮れの赤よりも、もっと赤い――不吉さを思わせる、血のように鮮やかな真紅。
こんな瞳の色の人間、都のどこを探したっていやしない。
都を襲った『鬼』が冠するのと同じ「朱」。

瀬戸内の『鬼が島』から、はるばる海を渡って大阪まで奉公に出てきた親父は、瞳の色がどうだとか、そんな些細な事を気にする人ではない。

ただ――寺子屋から帰ってきたときの俺は、酷く頬を腫らして、着物もあちこち破れていた。
その有様を見て、揉め事のもとになるならば……と気を遣って、「瞳の色を隠すことができるように」と、職人に頼んで誂えてくれた一点ものを贈ってくれたのだ。
眼鏡をくれてから、1ヶ月ぐらいの間、親父は晩酌をしていなかった。だから俺も、寺子屋で喧嘩を吹っかけられても相手にしなくなった。

もっとも、眼鏡をかけていると、俺の瞳は真紅ではなく……明るい光の元では鳶色、室内だと焦茶ぐらいまで落ち着いた色合いに見える。
だからなのか、瞳の色をからかわれることはほぼ、無くなっていた。

大店に奉公に出て、読み書き算盤を習う人間の中には、俺のように眼鏡をかけている者も珍しくない。
だから、俺もこのまま――大きくなったら親父の跡を継ぐのだと、そう……思っていた。

「親父が……俺の、ホンマのお父ちゃんや無い言うんは、気ィついとったよ。
だって、俺のこの瞳。こんな色の瞳をした人間、他にどこ探してもいてへんやんか。――けど、神さんがどうとか、大江山がどうとか急に言われても、ワケわからんわ」

「すまん、透。――お前が、刀を持てる位の大きさになるまでは、普通の子として暮らさせて欲しい……これが、お前のホンマのお母ちゃんの願いでな」

「ホンマの、お母ちゃん……?」

「許してくれ。源太はんと、お輪はんのおふたりが、生まれたばかりのお前を俺に預けて、大江山に登らはった日のことは――昨日のことみたいに覚えとる。
粉雪の舞う日でな。寒いけん、風邪を引いたら大事やと思って、火鉢を取りに行こうとほんの少し目を離した隙に……お前は鬼に攫われてしもたんや」

ずきり、と鈍い痛みとともに、俺の脳裏に朧な映像が浮かび上がる。

粉雪の舞う中、雪深い山道をひたすら進む一組の男女。
大猿の姿をした鬼を倒し、二人が辿り着いたのは、鬼の首魁・朱点童子の寝所。

「――透、大丈夫か?!」

「大丈夫や。ちょっと、眩暈がしただけやから……それより」

さっき見えた映像が、赤子の頃の俺の記憶だと言うのなら。
あの、赤鬼の『おまじない』を受けた赤子こそが、俺で。

「――そっか。誰かがやらな、アカンねんな。
俺が『嫌や』言うたら、親父もオカンも、友達もみんな。朱点に襲われて死んでまうんやな。――せやったら、しゃーないな、やったるわ」

ははっと、笑いながら告げる俺に、心底辛そうな表情で、親父は頭を下げた。

「――透。俺はな、ホンマはお前に、鬼退治なんかより……この店継いで欲しいって、思ってたんや。
言わな、いつかホンマの事を言わなアカンって……思っとったんじゃがの」

言えなかった――と、噛み締める様に吐き出す親父に、俺はただ「頭を上げてくれ」としか言えない。

「なあ親父。ホンマのお父ちゃんがその――源太さんやったとしても。俺にとっての親父はひとりしかおらん。だから、そんな風に謝らんとってや」

 

かくして俺――運命の一族の始祖・高羽透は、地上での平和な生活に別れを告げた。
悔いは無い。
魂の奥津城で出会った、水浅葱の髪に金の瞳を持つ剣士――あの人に出来たことが、俺に出来なくてどうする。

 

 

(神さんからの迎えって、どんなんやねん!)

人間は、神の世界に入れない。神もまた、人の世界に入れない。
俺が直接見たわけではないが、何年も前、お店に奉公に着たばかりの親父は、大江山に向けて雲の上を進む、神の行列を見たことがあると話して聞かせてくれたことがある。
何十という神が、大江山の鬼を倒す為に進軍したのだと。
ただ――天界最高位の女神・太照天をもってしても、倒すことが叶わなかった強敵――それが、鬼を束ねる『朱点童子』。
それ以来、何人もの猛者が大江山に挑むが、朱点の元まで辿り着けたものは居なかった。
――俺の、本当の両親だという、源太・お輪を除いて。

親父に言われたとおり、俺は一軒の武家屋敷の前に来ていた。
武家屋敷と言っても、この荒れ放題の都の中にあるのだ。なんとか人が住める程度の、いわゆる「あばら屋」である。

いちおう自分の生家らしいので、「ごめんください」もどうかと声を掛けるのを躊躇っていると、いきなり玄関の前の空間が渦を巻くようにぐにゃりと揺れた。
歪みの向こうから聴こえるのは……どこかで聞いたような覚えの有る、よく通る――少年の、不思議な響きを持った声。

「――来たな。君が、この世界の『運命の一族の始祖』か。さあ、私の手をとれ。女神の元に、案内しよう」

差し出された手を取ると、俺は何も無い、天も地もわからない、不思議な空間に取り込まれていた。
目の前に立つ、藍と水の戦装束を纏った人物を見て「あ!」と、無意識のうちに口から声が漏れていた。

「――あんた、誰や? いや、どっかで会うたような……アカン、思い出されへん」

腰まで届く、長い水浅葱の髪。ぱっちりとした大きな目。しかし何よりも印象的なのは、琥珀を思わせる金色の瞳。
こんな色合いの瞳を持った人間が、俺の他にもいたなんて。
声だけ聞いていたときは、てっきり男かと思った――が、こうして顔を見ると目の前の人物が女性であると、はっきりと判る。
首の後ろで束ねただけの飾り気の無い髪型は、戦装束の鎧とあいまって、凛とした彼女の雰囲気にとてもよく似合っていた。

(こんな目立つ相手、いっぺん会うてたら絶対忘れるはず、無いんやけどなぁ。……つーか、銀髪金目の女侍なんて、絶対耳に入るはずや)

「此処は、『魂の奥津城』――天と地の狭間にある、神でも人でもない者が通ることの出来る、特殊な『場』だ。これから、女神に会って、君の事情を説明してもらうわけだが」

金目の女は、俺の疑問に応えるかのように真正面から俺の視線を受け止めると、何故か一瞬――言いよどむように、言葉を切った。

「今なら、引き返すことも出来る。――君ではなく、他の魂に始祖の役割を任せることもできるのだぞ?」

どこで会ったのか、全く思い出せないが……どうやら、俺の勘違いではないらしい。この女は、確かに俺を――知っている。

「いや、俺がやる」
「そうか――君と、君の一族に祝福あれ」

手を出せという言葉に従って、握手でもするのかと差し出すと、「違う、こうだ」と拳を握らされた。
コツン――俺の拳の上に軽く一回。
コツン――拳の下から、軽く一回。
コツン――拳と拳を正面から、軽く合わせる。
掌を開いて上に――ぱあんと、手と手を打ち鳴らす。

そして俺は、こことは別の運命を歩む『一族の始祖』に別れを告げた。

 

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養子・分社・結魂についてのうちでの設定

養子

パラレル世界での自分。
嵐が100質で語ってる、「未来は決まっていない」が私の考えだと思ってください(笑)
つまり、非決定論の世界で並行世界(パラレルワールド)が存在します。
あ、完全ノーリセ貫けたら、そのプレイ記とったおうちは「決定論」の世界になりますね。

実家の面子は、養子先での人生は、実家で存命中のうちは見ることが出来ない。
死後「魂の奥津城」にいるわずかな間だけ、初代の禁術により水鏡を通じて見ることが出来る。

※嵐は、転生後が初代なので、初代高羽透が現世で眠っている間だけ、魂が「魂の奥津城」に戻ってきて、宮城嵐の人生を垣間見ることができる。
が、眠っている間に見た記憶(=夢)なので、目を覚ますと忘れてしまう。
R水月嵐の記憶は、魂に刻まれた自分自身の記憶なので、忘れているわけではないが、はっきりと思い出すことは出来ない。

※非決定論=「未来は決まっていない」という考え方。全ては選択によって変動する。
オンリーワンは存在しないが、変わりに不動のナンバーワンも存在しえない。
嵐いわく「下克上スピリッツに溢れた素敵な世界」

※決定論=ジグゾーパズルをイメージするとわかりやすい。
「未来も過去も、歴史は全て確定している。つまり、起きたことは変えられないし、起きないと決まっていない事件は絶対発生しないし、
起きると決まっている悲劇はどうやっても絶対防げない」
誰しもがオンリーワンであるが、かわりにナンバーワン以外は誰もナンバーワンになれない世界。

※魂の奥津城(たましいのおくつき)
天と地の狭間にある、輪廻転生の間にある魂たちの居場所。各家の初代当主のみ、生前からこの場所に出入りすることが出来ます。
初代当主のみ、死後この場所にとどまり、旅立つ一族を見送ります。つまり、初代当主に生まれた者は、悲願達成まで転生できません。一族を影から見守ります。
別名「初代専用のあの世屋敷」(笑)
転生を決めた魂は、ここから旅立ち、生まれ変わりの旅の途中、暗い道をずっとてくてく歩いてるイメージ。
いわゆる「あの世」(?)で、基本的に何も無いさみしーい空間です。黄泉の旅路ともいう。
墓前や仏壇に献花されれば花びらとなって降り注ぎ、故人の魂の旅路を彩り心を癒し、水や食物などのお供えは喉の渇きや空腹感を解消します。

生まれ変わり

基本、別の世界(苗字の違う、周回別の家)に転生する。
無印鷹羽(高千穂)での氏神・当主就任者は悲願達成まで輪廻の輪から外れ、転生できない。
鬼神の場合は、さらに『神社での神格を失う』ことが転生の条件になるので、今のところ氷雨・藍晶は転生できないまま。
実は15代・雪の時点で地獄に行くことも可能だったのだが、藍晶の願いを知った娘たちに懇願され、八代当主の魂を魔槍の契約から解き放つことを選択。

鷹羽黎翠(17代当主)の手により悲願達成がなされたあと、『麗しの君』、『鬼姫』、『六地蔵の君』、『時雨』の4柱の鬼神は転生を果たす。
藍晶と氷雨の魂は、特殊な状況により損傷が激しく休養が必要な為、すぐに転生することが出来ず、
今も「鷹羽家の御霊よ神社」でひっそり京の都を見守っている。

京の人たちの信仰心に魂が縛られているのもあるが、どちらかというと「転生に必要な活力が魂から失われている」という理由が大きい。
(魂の奥津城に顔を出すことはできるけど、黄泉の旅路を歩む行程にまだ耐えられないので旅立てない=転生できない)

生まれ変わりの設定がある人物

鷹羽日柳→R水月炎(前世の記憶無し。炎は自分の前世は「芸人」だと思っている。ときどきエセ関西弁がでちゃうのは「前世が芸人」だから)
R水月嵐→高羽透(宮城家での輝かしい思い出は欠落。R水月家での悪行の数々は朧に残っているため商才に優れる)
※ただし、嵐と透は性格が大幅に違います。透は嵐以上に自分の心情を吐露しません。
ドライな嵐と違ってクールなタイプなので、表面上落ち着いて見えてても実は「熱血」です(笑)

生まれ変わり確定ではないけど、もしかしたら? な可能性
無印高千穂初代とR水月蓮。
言動見ている限り、透架と蓮は似てないのですが、透架が湧流に対して持ってた情を考えると、
「今度こそ近くに居られるように」と世代近く生まれてきたと考えられなくは無いかも。いや鷹羽湧流とR水月初代は別人なんだけど。

生まれ変わり番外・他人の空似(同じ顔グラだけど全くの別人)

鷹羽初代とR水月初代→顔が似てるだけ。鷹羽初代(というか鷹羽一族自体が)は、人間というより神様に近い肉体構造。精神構造も特殊。
鷹羽初代は仙。R水月初代は普通の人間。

鷹羽藍晶とR水月嵐→上に同じく、他人の空似。
鷹羽藍晶は、「鷹羽直系のある人物に憧れて、『同じ時を歩みたい』と願い、『自ら短命の呪い』を受けた者(七瀬)の子孫」。
つまり、実は七瀬家の人間には「血によって他の人間を鬼に変じる」ほどの神力はない。R水月一族と同じくらいに「普通の人間」。
ただし、藍晶は一度死にかけた際、鷹羽当主の血によって一命をとりとめ、以来吸血衝動に悩まされている。
嵐と藍晶は、体のつくり的には近いけど、中身の魂が違うので全くの別人。髪の色が近い(=藍晶のスキルと、嵐の考え方のクセが似ている)だけ。
性格的に、嵐(透)=経済に対して関心と才能があるので相場が得意、藍晶=天運と人脈に恵まれ、勝負事に強い。

分社

養子と違い、コピーを造りだすというよりは、拠代となる鏡か剣か宝玉を分社先のご一族に渡すカンジ。
氏神は、天界の中にある氏神専用の社の中で暮らしている。(※無印高千穂の氏神のみ、外部との接触不可の絶対禁域に社がある)
分社されたご一族の拠り代に毎日降りる(顔を出しに行く)かどうかは、その氏神の性格と状況による。

結魂

氏神になると「指名を断れない」「惚れた相手以外とも『交神の儀』を行わなくてはいけない」ため、一族間恋愛ならこっちの方が幸せかも(笑)
RはPSP2台あれば、同一苗字での結魂・分社・養子縁組が出来てしまいますから。
それはさておき、うちでの設定。
「奉納点を必要としない」「時間経過が無い」ところからして、私は勝手に「ターミネーターの恋」を想像してます。
「たった一日しか一緒にいなかったのに、今でもママは好きなんだ」というアレですね。
行為は、実はナシの設定です(すみません!)
いや、肌を触れ合わせようと思えば出来なくは無いので、本人達の自由なんですが。
(したかしてないか訊くのは野暮というモンなので、誰と誰がどう……というのは、私の口からは語らずにおきます)

儀式に必要なのは、「魂の絆」なので、自分の心の傷とか弱いところとか、相手に全部さらけ出さなくてはいけないので……ある意味、行為ありの交神の儀よりハード。

なので実は、結魂の儀に望む前に、縁組が決まった段階で両家の当事者は頻繁に儀式用神鷹門を通じて頻繁に行き来するようになります。
ただし、自分ち以外のおうちの歴史に干渉できては困るので、討伐行くことは出来ません。
神鷹門を通過した時点で戦闘力を根こそぎ奪う特殊な腕輪(ファイブ○ターの『パラライズワーム』をイメージしてください)を強制装着されてしまうので、
万一、こちらの世界で街を歩いていて絡まれたら、うちに来ている場合はうちの子が全力で他所様のご子息やご令嬢を守ります。
屋敷の外には出られるのでプリクラとったりお買い物行ったりという、いわゆるデート(笑)は出来ますが、
討伐は危ないので当主と昼子様の許可がおりません。

番外・鷹羽家の御霊よ神社

八代当主・氷雨の没後、京の人たちにより建てられた神社。
一族のみが入ることが出来る「鬼神のほこら」は、戦闘に耐えうる特殊空間で、条件を満たせば『鬼神として封じられた』先祖と戦うことが出来ます(=鬼神チャレンジ)。
訓練というか手合わせ。稽古をつけてくれるイメージ。
鷹羽家は、京の人たちにとって信仰の対象になっているので、死後勝手に祀られることがあります。
当主就任者は転生できないため、「信仰の対象になり、かつ当主就任者である」という条件を満たしたものは魂を神社に縛られ、悲願達成の日まで眠ることも出来ません。
(注:街の人たちや当主以外の一族は『当主になると生まれ変われなくなる』ことを知らないため、悪気は全くありません。
知ってたらむしろ、氷雨は祀られてない程度には人望があるというか、京の人たちと良好な関係を築けていました)

例外として、伊緒は当主就任者ではありませんが、特徴的な外見(女27角娘・銀髪黒褐色肌青瞳のダークエルフカラー)から信仰心が集まりすぎた為に鬼神となりました。

寝ている君に。

「イツ花さん、綿入れってどこかにありませんでしたか?」

昼過ぎまで晴れていた空はすっかり鉛色に変わり、空気もどこか、しん……と張り詰めている。今夜は雪になりそうだ。

春生まれの氷雨も、夏生まれの藍晶も、これが一度目の冬だった。

先代たちが大江山を踏破したあとに生まれた彼らは、降り積もる雪に対して憎しみや怒りを抱くことは無かった。

とはいえ、降り積もった雪に大喜びして駆け回れるほど、幼くも無い。

鷹羽家に着たばかりの頃、巻物や指南書の読み方を教えてくれだとか、やれ組み手の相手になってくれだとか、
やたらと氷雨に纏わりついてきていた藍晶は、最近は少しだけ落ち着きをみせるようになってきていた。

もっとも、藍晶はつい先日――氷雨より拳ひとつ分ほど背が高くなった。今の彼に飛びつかれては、氷雨の体格ではとても支えきれないので、有難い傾向ではあるのだが。

「綿入れですか? えっとぉ、ちょーっと、お待ちくださいね」

ひとり分だけ渡された上掛けを見て、氷雨はもう一枚出してくれるようイツ花に頼んだ。

「氷雨様って、ずいぶんと寒がりなんですねェ? 明日は火鉢の炭を多めにしましょうか」

「違うよ。もう一枚は藍晶の分」

「だったら、イツ花があとで藍晶様のお部屋にお持ちしますけど」

「イツ花さんも色々お仕事があるでしょう。ひとり分もふたり分も重さは大して変わらないからね。俺が、藍晶の分も持っていくよ」

「氷雨様ってェ、そういう所がやっぱり藍晶様の兄君のようですねぇ」

二枚目の綿入れを渡しながら、イツ花はふふっと微笑んだ。

「直接の血のつながりが無くても、あの子は――藍晶は、手間のかかる弟だからね」

あまり甘やかすなと周囲には言われているが、それでもやっぱり小さい頃から見知っているだけに情が移る。

「お小さい頃のように、添い寝でもして差し上げればよろしいのでは?」

「いや、あの子は寝相が悪いから――」

どうせこれも蹴飛ばしちゃうんだろうけど、無いよりはあった方が良いから……と、苦笑する氷雨につられてイツ花も笑う。

「お風呂の用意もできてますから、お休みの前によーく体を温めてくださいね。湯冷めしないように、今日は薬湯を足してありますから」

「うん、ありがとう――じゃ、これを置いてから、湯浴みをしようかな」

イツ花と別れ、藍晶の部屋に綿入れを持っていくが、部屋に藍晶はいなかった。

相変わらず羽織を脱ぎっぱなしにしているので、衣架に掛ける。

指南書や巻物の類はきちんと綴じられており、文机のあたりは片付けられた印象を受けるが、着物を脱ぎっぱなしにする癖は未だに直らないらしい。

(ついでだし、布団をしいておこうかな)

最近は流石に、巻物を読んでいる途中で眠ってしまうような無作法はしなくなったが、秋口の頃まで藍晶は畳に寝そべったまま眠りこけてしまうことが良くあった。

今の藍晶の体格では、氷雨が寝床に運んでやるのは少し厳しい。

この冷え込みでは、布団を引かずに眠れば風邪を引いてしまうだろう。

本人が機嫌を損ねない程度に部屋を片付けて布団を敷いてから、氷雨は湯殿に向かった。

夕暮れの朱の光と湯気が立ち込める浴場は、イツ花が気を利かせてくれた薬湯の香りが効いてとても心地いい。

体を温め、ひと心地ついてから、氷雨は今は自分の私室を兼ねている――当主の間に布団を敷いて綿入れを重ねた。

そのまま、ごろんと寝転がる。

ぼんやりと、天井を見ながら……とりとめのないことを考えていた。

「うわっ!」

急に、体に何かが倒れこんでくる衝撃を感じて目を開けた。

――いつの間にか、眠ってしまっていたらしい。

「……なに」

「なんとなく…」

聞き覚えのある声。

視界に入る、金にほど近い翡翠色。

(――藍晶か。しょうがないなぁ、もう。いつまで経っても、子供なんだから)

「入りなよ」

すやすやと、自分のものではない寝息がかかるのを感じて、氷雨は少し驚いて目を開けた。

寝息がかかる、という状況も充分驚きの対象なのだが――今、自分の背中に回された、腕の感触。

抱きつかれているというより、抱きしめられているといった方が正しい。起こさないように、そっと抜け出そうかと試みると、ほんの一瞬だけ腕の力が強くなった。

視界の端にちらちら揺れる、黒に近い緑の髪。

(――この髪の色は、藍晶か。でも、どうして俺の布団で寝てるのかな。……まあいいか、藍晶が起きてくれないと、俺も布団から出られないし)

「藍晶。――起きて」

「んー……って、氷雨?!」

「しーっ! 他の皆まで起きちゃうよ」

大声を上げかけた藍晶を制し、氷雨はあらためて藍晶に問うた。

「あのさ、なんで俺の布団で藍晶が寝てるのかな。――その前に、放してくれないかな。俺、そろそろ起きて支度をしないと」

「え、あ、ごごごめん!」

きつく抱きしめていたのは、どうやら無意識だったらしい。

藍晶は慌てて手を離す。

布団から起き出して、寝間着から着替えたあと、氷雨は藍晶に当主として軽い注意を与えることにした。

「寝ぼけて間違えたとかにしてもさ、気をつけないと駄目だよ? 今回はたまたま、俺だったから良いようなものの――速瀬姉さんとかだったら大問題だよ」

「――氷雨、やっぱり覚えてないんだな」

「え?」

困ったように苦笑する藍晶は、続けて衝撃の事実を口にした。

「昨夜、氷雨が『入りなよ』つったから一緒の布団に入ったんじゃん。――まあ多分、朝になったら忘れてるだろうなーとは思ってたけどサ」

「え……そんなこと、言った?」

「言った」

やはり思い出せないが、藍晶が嘘をついているとも思えない。

「ごめんね。――でも、小さい頃に戻ったみたい……でもないか。藍晶も最近すごく背が伸びたから、流石に二人で布団一枚じゃ狭いよね」

「……まあね」

ぷいとそっぽを向く藍晶を見て、おっとりと氷雨は微笑んだ。

(やっぱり、まだ子供なんだな)

鷹羽家の朝は、今日も平和である。

好みの分かれる特殊傾向ありのコンテンツ。

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他家と共演

■夢の礫(要・閲覧パス)ネット小説レーティング・全年齢対象
1/2/3/4

秋家の紫音さん、鷹野さん、火鷹さんと、鷹羽家から氷雨、時雨、藍晶、常盤。

秋さまから頂いた素敵共演小説の続き部分(水月作)。秋若菜様の素敵な作品が拝読できるサイト→蒼天の秋

ほのぼのした雰囲気、日常を描いた作品。全年齢対象の健全ものですが、
二家共演、水月側の捏造設定ありという特殊ジャンルなのでパス制とさせていただきます。
水月の勝手設定を含みますので、共演二次創作がお好きな方はご覧にならない方がよろしいかと存じます。
共演絵→秋家ご当主と鷹羽家当主(要パス)

■片瀬家の系譜(番外)(1~4はパス不要)
1/2/3/4/5
片瀬に養子に行った嵐の物語。片瀬のif歴史。悲願達成時の当主・森香の視点で物語が進みます。相対三人称。※5話目以降に死ネタあり。

異性装束

女性当主が男性装束、男性当主が女性装束を着用しています。
鷹羽7代(パス必要)
※静御前(男装の麗人・雫海)
8代(パス必要)
※2代目静御前(女性装束・8代氷雨)

恋愛要素

いわゆる腐向け。BL。オトコノコ同士で恋愛要素のあるもの。

■診断メーカー元ネタコバナシ。氷雨視点(パス不要)/藍晶視点(パス必要) どちらも相対三人称(=二人称)。
※氷雨視点は普通の兄弟っぽいので鍵なし。
藍晶視点は完全に腐向けなのでパスがけ。片思いで寝惚けて抱きしめる程度ですが、大丈夫な方のみパス請求してください。
カプ傾向としては男5→男3、歳の差4ヶ月で年下片想いパターン。

寝ている氷雨にダイブしてみた!
迷惑そうに「……なに」って言うから「なんとなく…」って呟いたら、少しムッとして布団をまくり「入りなよ」って言ってくれた。
http://shindanmaker.com/188803
↑元ネタはコレ。

■月に十五の闇ありて(パス必要) 1/
異国へと養子に行った秋征。嵐そっくりの暁に会い、彼は何を思うのか。秋征視点の一人称。
カプ傾向としては男21(8ヶ月)→男5(4ヶ月)。年上片想いパターン。

■薄氷の鏡(パス必要)
/
1.5

※端数数字は、視点が藍晶から見たものに変わっています。

魔槍と藍晶。かなり特殊設定が盛り込まれているので、大丈夫な方だけご覧下さい。
事前に「特殊設定」をご覧頂かなくても読めるつくりにはしてますが、腐向け苦手な方には多分ムリ。(つっても所詮私の書くものなのでキス程度ですが)
イタ切ない系。すれ違いの片想いでトライアングラー。
感情のベクトルは男3裏人格(魔槍)→男5(藍晶)→男3表人格(氷雨)。氷雨→藍晶の感情はごく普通の兄弟愛。
というわけで報われない恋愛要素の業深劇場。

姿絵(Side:藍晶) 氷雨視点と違い、がっつり片想いの心理描写が入るのでパスがけ。外部公開からの再録。

■若竹の君

鷹羽家、九代当主藍晶の生涯。片想いだけどがっつり心理描写入るのでパスがけ。腐向け大丈夫な方はどうぞご覧下さい。

/

暴力・残酷描写系

流血・暴力描写などバイオレンス系。
コンテンツ未アップ。しばらくお待ちください。
片瀬家・大江山討伐前後の氏神のお話。春騎と春輝、創史。
片瀬家・阿修羅討伐 双子の秋幸・秋征、父春駒

※特殊傾向・現パロ

身内で楽しんでる感が強いコンテンツ、かつ、現代を舞台とした学園パロという特殊性で俺屍の原型全く留めてないです。
それを許容できる方のみご覧下さいませ。→コチラから

「好き」の種類 (※ぬるい腐向け。幼い子の片思いで歳の差)

「好きな人はいますか?」

「氷雨!」

満面の笑顔で答える藍晶に、ほんの少しだけ困ったように微笑みながら、氷雨は言葉を紡ぐ。
「……ありがとう。だけど藍晶――たぶんこれ、意味が違うと思――」
「違ってないもん。おれが好きなのは、氷雨だよ」

氷雨の言葉を皆まで聞かず、藍晶は強く首を振る。

「ええと、どう言ったらいいかな――って、伽羅さん、笑ってないで助けて下さい……」

 

本気で困っているらしい、氷雨の困惑の表情を見てとり、伽羅もわずかに眉をひそめる。

「この年齢の、しかもこのクソガキに説明するのは難しいわね」

何しろ子供の言うことなので、「好き」に種類があることを解って言っているのかどうかも定かではない。
しかし、薮蛇ということもある――果たして、教えても良いものか。

これまでの二人のやりとりを見ていて、幼い藍晶が氷雨に対して淡い恋慕の情を抱いていることに、伽羅は気付いていた。

 

けれど――氷雨が藍晶に向ける感情はおそらく、兄弟間での親愛の情以上のものでは無い。伽羅は、確認の意味を込めて我が子を諭す。

「――藍晶、アンタ近所の女の子と遊んでて『大きくなったらお嫁さんになる』とかって話したことあるでしょ? そういう意味なのよ。コレは」
「だから、おれが大きくなったら氷雨をお嫁さんにするの!」

(やっぱそうきたか。――氷雨くんは、多分本気にしないでしょうね……さて、どうするかな)

 

「……ええと、藍晶。気持ちは嬉しいんだけど、俺は男だから、藍晶のお嫁さんにはなれないんだよ?」
「ええー?! お嫁さんって『一生傍にいてください、大事にします』って思う相手のことなんだろ? なんでダメなんだよ!」

困ったように微笑みながら、あくまで相手を傷つけないようにと諭す氷雨の態度を見て、ここは我が子を傷つけず、二人の間に妙な遺恨が残らないようにするには、冗談めかして誤魔化すのが最良の策、と伽羅は判断した。
「なんでそこであたしの名前を出さないかな、このクソガキは。まあ母親も嫁には出来ないけどね。藍晶、女の子限定で答えなさい」
「うー……氷雨がいいのに。わかったよ、しょうがないなあ。氷雨がダメなら『静御前』。この前会った、冬の空みたいな淡い髪色の綺麗な人。長い髪の似合う優しそうな人だよ。あ、そういや目の色がちょっと氷雨に似てたかな?」

「!! ら、藍晶、どこでその名を……」

(どっちも氷雨くんよ! ……って、教えるわけにもいかないし。参ったわね。この子、多分かなり本気だわ)

「迷子になったときに、手を引いて帰ってくれたんだ。あの人、名前を聞いても教えてくれなかったけど、あとで近所のおっちゃんに聞いたら『あの方は静御前様だ』って教えてくれた。氷雨がダメならあの人でガマンするよ」

動揺する氷雨をよそに、藍晶は嬉々として静御前との経緯を語る。
「静御前」の二つ名を持つ当主は実はもうひとりいるのだが、藍晶のいう特徴を備えた人物は一人しか居ない――すなわち、7代当主・雫海の代理で娘薙刀士の装束を身につけて先日の式典に出た、氷雨である。

 

あの人で『ガマン』って何だよ、とポツリと呟きながら頭を抱える氷雨の袖を引っ張り、藍晶に聞かれないよう注意しながら小声で伽羅は話しかけた。

「氷雨くん、ちょっといい? ――あの姿、見られてたのね。まぁいいわ、どうせ子供の言う事だし、藍晶は飽きっぽいからすぐ忘れるわよ。この後の訓練でやる気無くされても困るから、ココはあの子に合わせてやって」

 

わかりました、とため息をつく氷雨の姿を目にした藍晶は、泣きそうな顔でこちらを見ている。

「……氷雨、おれのこと嫌いなの?」
「ごめんね、ちょっとびっくりしただけだよ」

 

優しく頭を撫でる、大好きな手の感触に安心したのか、藍晶は何とか泣くのを堪えた。

「――大丈夫、俺は藍晶のことが大好きだから、嫌いになんてならないよ。俺でいいなら、ずっと傍にいるよ」
「やったー! じゃあ当主様――氷雨の母さんにも認めてもらえるように、おれ頑張るから!!」

ぎゅーっと、嬉しそうに氷雨に抱きつく藍晶を見ながら、伽羅は心の中でそっとため息をつく。
(氷雨くんって、どうしてこう迂闊なのかしらね。この流れは思いっきり、求婚と了承ととられても文句は言えないのに……きっと苦労するわね、藍晶は)
どのみち袖にする気なら、妙な期待を持たせるようなことを言わなければいいものを。
たしかに、「あの子に合わせてくれ」と頼んだのは自分だが、それにしてももう少し言い様はあるのではないだろうか――という気がしないでもないが、氷雨とてまだ5ヶ月の少年である。まして、色恋沙汰にうとい彼の性格から、そういう機微を期待するのは酷というものかもしれない。

「ま、後々困ったことがあったら相談しなさい。あたしが責任持つわ」

我が子の幸せを願わない親などいない。

どういうわけか、この歳の離れた兄のような存在に恋心を抱いてしまった我が子の将来を思い、当分『静御前』の正体は全力で秘匿しよう――と、伽羅は密かに誓いを立てたのだった。