1・「余白」。同人誌=「紙」であり、印刷物であり、「本」です。てことは当然、綴じ側がある。
多分、殆どの人が同人誌のマンガ読む前に、商業誌で連載なりコミックスになってたりする紙の漫画に触れてから同人誌を知ると思うんですよね。てことで商業誌準拠で「内枠」を意識して描き込みます
2・セリフやモノローグなど、読者さんに「読み飛ばされると困る」文字は内枠内に収める。
特にノド側。綴じ側付近は無意識に読み飛ばす場所。
印刷で切れない範囲でいうと、仕上がり線から3mm内側になってれば切れなくて済みますけど、「文字が切れずに印刷可能か」と「読者の頭に入るか」は別。
3・奇数ページでの「めくり」を意識した構成にする。
漫画は基本、セリフが縦書なので右綴じになるかと思います。その場合、奇数ページがめくるページになるので、左ページ最終コマは次ページへのつながりを意識する。「ヒキを作る」てやつですね
4・時間経過の演出
現在進行形の出来事であれば、コマの外側は白。
過去の回想であれば、コマの外側は黒。
これも商業誌でお約束として使われることの多い表現方法なので、読者さんを混乱させないように意識してる
※コマの外側=内枠より外側、かつ塗り足し線までの間の空間
5・ネームの段階から、基本「見開き単位」で画面を作る。扉というか、開始ページが左ページの場合とか、ページ数によっては最終ページが右ページで終わることもありますが、WEB連載と違って紙なので。
基本、見開き単位で原稿は作ってます
6・視点。「これは誰の視点で描かれた話なのか」を意識してお話を作る。
例を出すと「初代当主の物語」であっても、初代当主から見たお話なのか、イツ花ちゃんから見たお話なのか、それとも当主以外の誰かから見たお話なのか。
描き方も見え方も全然違ってくるので、ここはブレさせないようにしてます
7・原稿データとしてのお話。モノクロ・グレースケールの場合は解像度600Dpi。
私は線画まで紙の時はA4サイズ原稿用紙を使っているので、入稿サイズがA5のときは、線画を取り込んでトーン貼りの前にテンプレートに線画を貼り付けてからトーン貼りとかベタ塗りとか開始してます。
8・入稿する日は休日にする
不備があると印刷屋さんから連絡あるんですけど、勤務の日だと電話でたりメール返したりが出来ないので。
データ入稿って、データの作り自体に不備が無くても、システムエラーで印刷屋さんに届いたデータが破損してて読み込めなかった…とかがゼロでは無いのですよ
9・発注かける印刷屋さんには紙見本を請求する
紙の種類が同じなら紙見本はどこか一つのがあれば足りるのでは?と言われそうですけど、紙見本には網点出力の見本もついてくるんですよ。どの印刷屋さんがどれくらい線が太くなったり飛んだりするかの目安にもなるんで、紙見本大事。特殊紙見るの楽しいし
10・台割を作る。
台割とは何ぞや。何ページ目に何が配置されるかをわかりやすくした表です。入稿データの画面スクショ・台割を入稿時に添付することで乱丁と落丁をほぼなくせますし、1ページ丸ごと白紙とか丸ごと黒ベタとかでも台割添えてれば印刷屋さんも「ああ不備じゃないのね」とわかります
11・頒布価格は500円か1000円単位で決める。
これは即売会に出てた頃の影響なのですが、端数があるとおつりの管理が煩雑になるので。
ざっくり基準でいうと、単純に印刷費÷冊数(100円以下の端数は切り上げ)で良いと思います。
とはいえWEBオンリーだとおつり扱わないから端数出ても良いかも。
(というか、発行予定のカラーイラスト本は700~800円にすると思う。多分)
◆◆◆以下補足◆◆◆
原稿用紙の用語説明
ノドとか綴じ側とか、内枠とか、グレスケがどうのとかの補足画像。
市販のネームノートをスキャン。
手で隠れる部分にも重要な文字情報は置かない方が良いのですよね、本当は。手で隠れる分への配慮は自分が出来てるか怪しいけど。
※この画像、ノートのメーカーさんからもしお叱り受けたら消します
補足画像
あと、7の補足として。
クリスタさんで作業する場合、個人誌だったらトーンは「トーン化処理」しますけど、合同誌とかゲスト原稿の場合、印刷がオンデマンドの場合はトーン化処理せずグレスケ状態のデータと両方用意して手元に置いとく…とかですかね。
オンデマンド印刷とかコピー本とかだと、グレスケのまんまでも刷れます。
自分の個人誌だと「ああこれ意図してやってるんで印刷屋さんのミスじゃないですよ」て言いきれるのと、私はグレスケのまんまで印刷された本より、アナログ時代を思わせる、網点処理されたトーンの方が好きだから個人誌はトーン化処理してから入稿です。
あとデータをWEB掲載するときに、トーン化済だと画面で見たときだけ「モアレ」が見えちゃうことがあるんですよね。(これクリスタの初期設定上の問題なので、実は印刷したものはモアレてないんです)
ただ見た目がモアレに見えてる(とか、重ね貼りをモアレにしか見えないと思う人も場合によっては居るので)状態って、気にする人は気にするので、避けられるんだったら避けた方が良いのかも?というだけの話。
網点ずらした重ね貼りは不備じゃないんで、印刷所からの不備連絡は来ませんよ。
自分の個人誌だったら自分とこに問い合わせ来た時に印刷所さんのミスやデータ作成のミスじゃなくて意図してやってることですよーと私が言いきれば良いだけの話ですけど、他人様の原稿と一緒に掲載される合同誌だとそうもいかないので、オンデマンド印刷で刷ることがわかってたらグレスケのまんまにしといた方が無難かなあ、と。
モアレに関しては、紙原稿でスクリーントーンの重ね貼りをしていたころから、影の表現をしてずらして貼るとか、疑似グラデを作るためにあえて模様っぽく見えるように重ね貼りするとかの技法はあるんですけど、これ原稿作った本人じゃないと意図してやってるのか、そうでないのかわかんないですからね
追記
↓開始ページを1として数える場合の台割
台割説明用画像
台割は実は、ネーム作業に入る前にざっくりと「何ページの本を作る!」って決めた時点で作ります。
印刷所によって、本文開始のページを1として数えるか3として数えるかも差異があるので、ノンブルと入稿データの照らし合わせるのに使えますし、頁調整もやりやすくなります。
↓開始ページを3として数える場合の台割
台割例2 3P開始の場合
※上記説明画像、19列目(15ページ目)内容のセル、「トビラ3」が正しいです…すみません
開始ページを1にするか3にするかは、どっちでないといけないという明確な定義は無いので、印刷屋さんからの指定があれば、それに合わせる方が無難です。
私はいにしえのオタクなので、3スタートの方が落ち着きますが、印刷屋さんの料金表が「表紙込」になってるか「本文のみのページ数で数えてください」にしてるかで台割のノンブル表記を変えてます。
同人誌って、本文と表紙だけでいいんじゃないの?ってきかれそうですが、即売会や委託する場所によっては「奥付」がきちんと記載された同人誌以外は頒布しちゃダメ、って規定があることもあります。
あと奥付が無いと、読者さんが万一、乱丁や落丁本を手にしたときに交換対応できなくなっちゃいます
奥付って何ぞや。
・発行年月日
・発行者名(サークル名)
・発行タイトル名
・発行者連絡先
・印刷所名(コピー本なら「コピー製本」でOK。どこのコピー機かまでは書かなくてよいです)
をまとめて記載したページです。
奥付に印刷所名を記載するかどうかは任意なのですが、印刷屋さんによっては記載がないと発注受けてくれなかったりします。
目次は無くても構わないのですが、奥付は「発行物に責任を持つ」って意味で作るページなので、私は必ず入れてます。
奥付に記載する「発行者連絡先」は、先述の通り、万一、乱丁や落丁などの、製本上の問題があるお品が渡ったときに交換対応の受付窓口として記載するものなので、一番良いのは「連絡が付くメールアドレス」だそうです。
SNSアカウントはログインしないと使えないサービスだからダメ!って定義してる印刷屋さんもあるんで、入稿前に、イベントや印刷屋さんの規約をよく読んで、SNSアカウントのみでよいのか、メールアドレス必須なのか確認しておきましょう
(私はメールアドレス/マシュマロQRコード/サイトURLを全部載せてます)
ちなみに「発行年月日」は、入稿した日や、納品予定の日では無くて「読者さんが手に取る予定の日」という定義の日付。イベント合わせならイベントの日で良い。実際ズレても問題はないもの。
勿論、イベント合わせとかなら告知した時点で待ってくださってる方居るので、守れるに越したことないですけど。
あとめちゃどうでも良い豆知識ですが、奥付は「冊子に記載される発行者情報」なので、ペーパーに記載するのは実はおかしいんですよね。私も学生の頃、知らずに載せちゃってたけど。
あと古の同人誌だと奥付に現住所載せてる時代もありましたが、現代でソレやると危ないんで、現住所は載せちゃダメです
台割に遊び紙は入れなくてよいのか?
遊び紙はデータを印刷する作業が無いので、台割に入れなくても問題ないです。
逆に、カラー口絵(本文と別刷りで挟み込んで折りこみするとかの加工で付ける)は印刷屋さんで出力作業が要るので、カラー口絵がある場合は台割の中に記載。
トビラと口絵の違いって何?
先述の通り、トビラは「本文ページ数に含まれるページの一部」
口絵は「本文と別口で刷って、製本時に挟み込んで本文の前に着ける絵が入ったページ」です。
本文がB5でもB5単ページ以上の幅を持たせたりする加工ができます。
遊び紙と口絵はどっちか選択じゃなかったかな(詳しくは利用希望の印刷所様に各自確認してください)
あとは…基本中の基本なので割愛しちゃいましたけど。
同人誌を作るうえで、考えないといけないのはページ数。
表紙込か本文のみか、数え方がどちらになるにしても「4の倍数」でなければいけないという事実は不変。
なので、本編で4の倍数に余ったり足りなかったりしそうであれば、人物紹介や目次やトークなど「あっても無くても差し支えが無いページ」を増やしたり減らしたりして調整するしかないです
頒布価格についての補足。
めちゃアバウトですが、自分基準として、B5・表紙カラー40P以下・印刷屋さん発注なら500円。
50P超えればもう、A5でもB5でも1000円で良いんじゃないかと思います。
とはいえWEBオンリーだとサークル側が現金扱うことは無いんでお釣りの心配いらないし、システムが自動計算してくれるので700円とか800円とかでも良いかも。
(というか、発行予定のカラーイラスト本は700~800円にすると思う。多分)
刷ったことがある者としての基準でいうと、小説同人誌で80P越えてる場合、1000円は安すぎると思うので、1300円くらいでも良いくらいじゃないかと思います。
あともうひとつ、これは気を付けていることではなくて、自分で「決めていること」なのですが。
WEB掲載済の作品を同人誌に再録することがありますが、その場合、漫画なり描き下ろし短文なり、なんらかの「描き下ろし」をプラスしてます。
そして、私のこだわりとして、「紙の本に先に掲載した作品は、紙の本が完売した後もWEB掲載はしない」です。理由は、紙の同人誌って、もともとの精神が「コピー代渡すから、原稿提出しないけど私の分もコピーしてね」の精神で頒布しているものだからです。
最近は、ありがたいことに、オンデマンド印刷対応の印刷屋さんが増えたので10冊とか20冊の少部数でもきちんと製本されててかわいい特殊紙を使ったすてきな本が作れたりしますが、装丁への拘りって単なる私のワガママなので。
紙の本にしか掲載しない描き下ろし作品は、我儘に付き合ってくれる、印刷代をワリカンしても良いよって方に対する私なりの「ありがとー✨」って気持ちです。
描き手が読者に返せるものって、「新作」だよなぁと個人的に思ってるだけなのですが。