1019年・10月 記録者・3代目当主 蓮
娘がやってきた。蓉に習い、娘の名は母神から拝借して華蓮(カレン)。
ただ……母神にあんまり似ないと良いな(性格が)。
音痴であることを気にしているらしいが、おれからしたら華蓮の唄う童謡は、そんなに音が外れてる気はしねーけどな。
そうそう、椿姫ノ花連様が出世なさったそうだ。なんだろう、この素直に祝えねー微妙な気持ちは。
それはまー置いとくとして。由羽ちゃんの時に、初代当主が嬉しそうに仕立てた着物のうち、着てないものが幾つかあるみたいだからあげてもいいかと本人に聞いたら、「良いけど、せっかくだから新しく来る女の子にも何か仕立ててあげようよ。ずっと使えるものとして、あたしは帯をオススメするけどね」と言われた。
討伐のときは前列一掃で頼りになる子だけど、こういう心配りの効くところは一体誰に似たんだろうな? 佑兄さんか。
今月はおれも蓉も子供の訓練してるから、出陣は由羽ちゃん一人。
……佑兄さんのときも思ってたんだけど、薙刀士って何気にハードな職業だな。
鳥居千万宮に行ったら、黄川人が何かお稲荷御殿の謂れを話してくれたらしい。
由羽ちゃん曰く「初代様が『あのガキが言ってることは所詮瓦版見りゃ誰でもわかる程度の豆知識だけど、ごくごくたまに役立つことも言うときがあるから、退屈だと思ってもあまり苛めてやるな』って言ってたから、何か実入りがある話かと思って一応聞いてはみたけど、お稲荷御殿で首吊った可哀想な人妻の話なんて雑貨屋のおじさんでも知ってたから、今回の話はハズレじゃないかな」とのこと。
薄々気づいてたんだけどさ、何か家(ウチ)の女の子達って黄川人にちょっと厳しくない?